3
気がつくと朝が来ていた。俺は暖かい布団に体を包んでいた。頭が重い。昔の夢を見ていたらしい。まだ鳴る前の六時五十分のアラームを消すと同時に濁った溜息を吐く。本来は七時にアラームを設定すれば良いのだが、俺は目が醒めてもすぐに身体を元気に動かせる人間ではないので、こうしてしばらくの間布団の中で意識を整える準備の時間が必要なのである。
「ってぇ…」
見ると、首元にスマホがあった。だいぶ熱くなっている。画面には、Kというアルバム名のあの曲が再生停止の状態になっていた。ああ、そうだ。俺、昨晩この曲を聴いて寝落ちして…だからきっと、あんな夢なんかみてしまったんだ。
「変わってないな、全く」
昔の夢ではあったが、昔の俺は今の俺となんら違ったところはない。強いて言えば、少し髭の手入れが悪くなったのと、視力が落ちたことくらいである。
天井を見つめた。俺はいまだに自分の居場所を見つけることができていない。人と関わることをストレスだと思っているし、近づけば近づくほど複雑に絡んでこじれていってしまうと分かってはいるのに…なぜその中に居場所を見出そうとしているんだ、俺は。
そんなことを考えているうちに時計は七時をとっくに上回っていた。俺は飛び起き、腐敗した精神が入った身体を無理矢理に動かして大学へと向かった。
幸せになれる、その日まで 東京 @higurashi_24
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。幸せになれる、その日までの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます