第121話 チーレム
「カオス!今日こそ変異だべ!」
秘薬生成を使い。
その背後にはポーチの姿も見える。
「昨日駄目だと言ったばっかりだろ?」
ベーア達は、此処の所毎日変異させろとせっついて来る。
理由は――俺は視線を横に移す。
そこには、一心不乱に機械の様な物を弄る玲音の姿があった。
今は彼女も一緒に暮らしている。
ベーアやポーチはどうやら、彼女を目標視している様だった
まあ確かに二人よりも遥かに強いからな、玲音は。
当の玲音は此方のやり取りに我関せずと言った感じで、基盤っぽい物を弄り続けていた。
彼女は複数のスキルを組み合わせ、
あほっぽい玲音の考えそうな事だ。
よくそんなくだらない事に情熱を注げるものだと感心する。
そんな無駄な事をしている暇があるのなら、俺に先っちょだけでも触らせてくれればいいのに……
無駄にガードが固くて困ってしまう。
因みに、玲音には毎日ハーレムに入るよう根気よく交渉している。
が、その度に顔面を吹き飛ばされていた。
だが幾ら拒否されようとも、俺は勧誘を死ぬまで止めるつもりはない。
玲音もそれにさっさと気付いて、早く諦めて首を縦に振ればいいのに。
これだから学習能力の低い奴は困る。
「一体いつまで待てばいいべ!?」
「だから3年つってるじゃん」
数字になんら深い意味はない。
単に横にしたらオッパイみたいに見えるから、そう設定しただけだ。
所謂インスピレーションと言う奴である。
「長いべ!待ってられないべ!」
「父上……出来れば私も早めにお願いしたいのですが」
「まあ焦るな。寿命は長いんだ。少しづつ強くなっていけばいいさ」
亜人系は寿命が長い。
それに変異をすると、肉体は最盛期に近い状態へと調整される――何故かベーアはロリだったが。
だから時間は幾らでもあるのだ。
焦る必要は無いだろう。
「早く強くなりたいべ!」
まあ確かに、強さを求める気持ちは俺にもよく分かる。
あの時の玲音との戦いで、俺は自分の無力を痛感させられた。
俺にもっと力があれば…………
取り押さえる振りをして、玲音のオッパイを鷲掴みにする事だって出来た筈だ。
合理的に。
そう思うと、悔しくて悔しくてしょうがない。
だからポーチ達の気持ちは本当に……本当によく分かる。
が、駄目な物は駄目。
二人の頭がおかしくなって、玲音の時みたいに説得する事になったら面倒くさいし。
「まああれだ。暇ならサラとでも遊んで来い。そしたら3年なんてあっと言う間だって」
夢の実現に忙しいので、俺は二人に遊んでくる様に勧める。
横でギャーギャー騒がれては効率が落ちてしまって敵わない。
今の俺は、ドントタッチオッパイ共に関わっている暇などないのだ。
「ぬぅぅぅぅ……こうなったらやけ食いだべ!」
そう言い残し、ベーアが部屋から出て行った。
やけ食いも何も、彼女は年がら年中お菓子をもしゃもしゃしている。
つまり只の平常運転だ。
「父上。弱いままでは……私は父上のお役に立てません」
「なんだ、そんな事なら気にするな」
それだけで100点満点だ。
と、流石に口にするのは憚られるので――
「ポーチは傍に居てくれるだけで十分だよ」
「父上……」
ちゃんと薬を完成させておっきくしてやるからな。
楽しみに待っててくれ。
「にんにん!」
何故か謎の言葉を残し、ポーチがどこかに消える。
きっとサラの所にでも遊びに行ったのだろう。
まあ今の見た目はともかく、彼女はまだまだ子供だしな。
「お前、前より酷くなってるな」
「ん?顔か?」
それまで興味なし状態だった玲音が、手を止め口を開いた。
まあ顔の事ならしょうがない。
今の俺は化け物だしな。
俺もさっさとレベルを上げてインキュバスになりたい所だが、玲音の奴がゲーム作りに夢中で相手にしてくれないので、今は薬の生成を優先している。
顔が不細工だと言うのなら、レベル上げに協力して欲しいものだ。
「んな訳ないだろ。まったく」
玲音が呆れた様に溜息を吐く。
しかし胸は揺れない。
折角大きな胸をしてるのに、何故か玲音はさらしを撒いて胸を押しつぶしてしまっていた。
巨乳をさらしで押さえつけるとか、神に対する冒涜としか思えない。
流石魔王と言った所だろうか。
「所でハーレムに入る気は――「断る!」」
駄目だった。
無念。
「――っ!?」
その時、突然玲音の目つきが変わる。
セクハラに怒った訳ではない。
別の理由だ。
そしてその理由には、俺も直ぐに気づいた。
少し離れた場所に、とんでもなく強力な何かがいきなり発生したからだ。
「ちょっと見て来る」
それは本当に唐突だった。
捨ておくわけにも行かないので、俺も確認に向かう。
「俺も行くよ。お前だけじゃ、何か馬鹿な事やらかしそうだしな」
「馬鹿な事をやらかすのはお前だろ?」
俺が馬鹿な事をやらかす?
意味が分からん。
巨乳ならセクハラする。
そうじゃないなら適当に相手をする。
対応としては完璧だ。
よって心配は無用。
「なんじゃ?出かけるのか?」
中庭に出ると、サラとニーアがドラゴン共に餌をやっていた。
もう馬位の大きさはある。
屋敷が大きいとはいえ、ドラゴンの最終的なデカさを考えると広さはじきに足りなくなるだろう。
そろそろ新しい物件を探した方が良さそうだ。
「おう、ちょっとな」
そう言えばルグラントの皇帝が、俺に贈り物をしたいと遣いの者を寄越してきた事を思い出す。
望む物なら何でも用意するとか言ってたし、帝国に広い屋敷を用意して貰うのも悪くは無いだろう。
まあその事は今度考えよう。
「じゃあ行って来る」
「お気をつけて」
ニーアさんが頭を下げると、オッパイがボインボインと揺れた。
うん、最高。
やっぱ胸は開放すべき。
さらしを撒くなんて言語横断だ。
「なに人の胸見てんだよ? 」
「哲学的な事だ。気にするな」
「胸を見てする哲学なんて、聞いた事も無いぞ?」
「じゃあ帝王学で」
「なおさら聞いた事ないんだが?」
「良いから行くぞ」
さらしと言う悪習。
その断絶を熱く語り合いたい所だったが、今は他に気になる事があるので有耶無耶にしておいてやろう。
命拾いしたな、玲音。
「ん……あれ?」
空を飛んで異変のあった場所へ向かうと、そこには見慣れたオッパイが立っていた。
俺的オッパイランキング1位のあの人だ。
まあ人と言うか、神様だった。
「乳神様!?」
何もない荒野に咲く一凛の乳。
その姿は儚く、ボインボインだ。
うん、特に意味はない。
「乳神様って、地上に降りて来られないんじゃ?」
だからこそ、玲音の討伐を俺にさせようとしていた筈。
まあ最終的には天界から駆けつけて、助けてくれはしたが。
「首になったのよ」
「首?」
乳じゃなくて首?
どう考えても彼女の売りは、そのどでかい胸元の危険物だ。
首が汚いわけではないが、乳に比べればカスとしか言いようがない。
「まあ正確には、降格ね。神じゃなくて、今は再研修中の見習いよ」
降格?
乳神様は――いや、降格したんなら。
「乳さんは何で降格に?」
「この前地上で暴れたから――って!?誰が乳よ!?」
「いや、神様じゃないんなら只の乳じゃないですか?」
神様ではない以上、乳“神”というのは明かにおかしい。
神と言う肩書を失った彼女。
ならばそこに残ったのは、
「只の乳ってあんた……はぁ……まあいいわ。あんたには何を言っても無駄でしょうから」
乳さんが盛大に
重力に引っ張られた二つの果実の、その愛おしい事愛おしい事。
「本当はもっとキツイ罰が待ってたんだけど。世界への介入じゃなく、神を止める為だったって事でこの程度で上司がなんとか上に掛け合って済ませてくれたのよ」
何を言っているのかよく分からん。
だが彼女がお疲れと言う事だけはよく分かった。
「お疲れの様ですし。胸をもみまっしょ――!?」
いきなり後頭部をぶん殴られた。
振り返ると玲音が冷たい目で俺を見ている。
「なゃにをひゅる」
舌が噛み千切れたので上手く喋れない。
舌ったらずは幼女がするから可愛いので、俺がやっても意味はないんだが?
「馬鹿を修正しただけだ。それで、神様――いや、天使様か。どうして地上に?」
「この世界で0から修行し直しってなったの。他に行く当てもないし、悪いけどあんたらの世話になるわ」
成程。
要約すると――
俺のハーレムに入りたい。
と、彼女はそう言っている訳だ。
「歓迎しますよ。ようこそ、冒険者パーティー・チーレムへ」
俺は笑顔で手を差し伸べた。
乳さんはやれやれと言った表情で、俺の手を握り返す。
これにて俺と彼女のハーレム契約は完了した。
多分。
因みに舌は速攻で生えたので、俺の舌ったらずを聞きたかったのならご愁傷様だ。
全生物の巨乳化。
そしてインキュバスになってモテモテハーレム。
夢の実現はまだまだ遠い。
だが、僅かにだがゴールが見えてきた気がする。
5人目のハーレム要員の加入により。
まあ取り敢えず、ラストに相応しい言葉で絞めるとしよう。
「俺達の冒険はこれからだ!」
完!
「どうでもいいけど、チーレムってパーティー名はやり過ぎよ。変えなさい」
「絶対嫌です」
~FIN~
ゾンビスタート→ハーレムエンド~え?俺は魔王じゃないよ?ただのスケベだよ?~ まんじ @11922960
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