概要
コロナで亡くなった母が最後に食べたいと言った『赤いきつね』
料理上手で主婦の鏡だった母は91歳、……コロナで逝ってしまった。50年以上も前に食べていた頃のインスタント食品は塩分が高かったのだと思う。一切口にしなかった母は、ここ10年以上、赤いきつねが好きだった。出汁もあげも美味しい美味しいと言って食べていた。わたしの料理の支度に気を遣っていたのもあると思うが、間違って異なるメーカーのものを買ってくると、怒るほどだった。「赤いきつねじゃなきゃだめなんだよ」と。
高齢で糖尿の母、……コロナにかかりわたしは覚悟したた。病院で最後に許されたもの、それは赤いきつねだった。赤いきつねと鋏を病院へ送る。が、戻ってきたのは七味が着いた小さな鋏と小さなお骨だけだった。
高齢で糖尿の母、……コロナにかかりわたしは覚悟したた。病院で最後に許されたもの、それは赤いきつねだった。赤いきつねと鋏を病院へ送る。が、戻ってきたのは七味が着いた小さな鋏と小さなお骨だけだった。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!わたしはこの感情をまだ言葉にできません
レビューという場で私事を語るは非常に忍びない事ですが、お許しください。どんな有名人が去ろうと、身近な人が罹ろうと、わたしにとってコロナというものはどこか他人事、絵空事のようにさえ思えていた。けれど、世を騒がせ始めて3年弱が過ぎようとしている、今。この文章を読んで初めて、件の病をとても身近なものに感じた。この文章に於いて其れは病のひとつである。それ以上も以下もないにも関わらず。
美しい、や、暖かい、では、とても表しきれない作品です。Excellent!!!なんてもっとです。なんだか、ずっと、お守りのように抱いていたいような。今のわたしに言える事はこの程度です。申し訳ありません。執筆、投稿いた…続きを読む