第4話

   

「今日も楽しかったですわ、なおみちさん」

「どういたしまして。こちらこそ」

 ドライブが終わり帰宅したところで、彼女が幸薄そうな笑みを浮かべた。

 思わずギュッと抱きしめたくなる表情だが、そうもいかない。

「では、また……」

 彼女と二人の子供を車内に残したまま、私はドアを閉めた。

 三人の姿がスーッと消えていくが、どうせ次の休日には、また現れるのだろう。

 買った後でわかったことだが、私が中古で購入したのは、三人の母子が憑いているファミリーカーだったのだから。




(「私が中古で購入したのは、家族の幸せを乗せたファミリーカーだった。」完)

   

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

私が中古で購入したのは、家族の幸せを乗せたファミリーカーだった。 烏川 ハル @haru_karasugawa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ