第14話 女学校教師の話(閲覧注意:特に女性の方)

 父方のおばあちゃんが生きているころ、よく若い時の苦労話をぼやいていた。

 その中でも、孫の僕からして、一番、衝撃的な話がある。


 多分、戦時中のころの話だと思うけど……。

 よく女学校の話をしてくれた。


「幸太郎ちゃん。あのね、おばあちゃん、保健体育の授業が嫌いやったわぁ」

「え? なんで?」

 時代は違えど、ただの保健の授業だ。

 なにがそんな嫌だったのか、気になった。


 すると、おばあちゃんは顔を歪めて、こう語りだす。


「保健の授業が始まるとね……毎回、先生が美子(仮名)さんていう子を教壇に立たせるのよ」

 女学校なので、生徒は女子しかいないらしい。

「教壇に立たせたら、先生はすぐに『美子、早く脱げ!』って素っ裸にさせるの……」

「え……」

 僕は言葉を失った。


 一応、聞いてみる。

「その先生って男?」

「当たり前じゃない……」

 セクハラってレベルじゃないと、黙って聞いていた。


「脱がせたらね。その子の両手を広げさせて、解説をはじめるのよ」

 

 おばあちゃんが言うには、当時の男女差別は相当酷く、また大人の先生に何も言えなかったらしい。

 美子さんも毎回指名されるので、黙って無表情で言うことを聞いていたらしい。

 素っ裸にされた美子さんを、人形のように扱う教師。

 それを見て、無言で固まる女子生徒たち。

 職権乱用どころか、犯罪だ。


 その変態教師は、伸びる指示棒で美子さんの胸に触れて、こう言いだす。

「見ろ、みんな。美子は14歳だから、乳腺が発達してきたな。女ってのは、こういう風に成長するんだぞ」

「「「……」」」

 直接、手で触れるわけではないが、教師は美子さんの身体を隅から隅まで、なめまわすように、一々指示棒で触れては説明をする。


「ここが股間だな」「ここが脇だな」「ここが尻だな」


 そんなの女子生徒は説明されなくても、わかっているのに、一人延々と喋っているらしい。


 おばあちゃんは、悔しそうに言っていた。

「美子さんがかわいそうだったわぁ。子供のばあちゃんじゃ、なんもできんかったからねぇ」


 僕はこの話を聞いて、思った。

 その変態教師は、保健体育と偽っては、美子さんが好きだから、裸にさせていただけなのだろうと……。


 おばあちゃんは、無事に女学校を卒業したあと、僕のおじいちゃんと結婚した。

 だが、美子さんはきっとトラウマを抱えて生きていたのだろうと思うと、僕は怒りを覚えた。


 その後は知らないが、きっと変態クズ教師は、わいせつな犯罪で捕まったのだろうと思う。


 了

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人から聞いた話 味噌村 幸太郎 @misomura-koutarou

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