ほどけないように 固く結んだ

ーー窓から差し込む西日に、柔らかく照らされた香奈の栗色の髪に、紙の上に流れ込んだ激しい線に、結妃はとらわれた。
そしてその日以来、彼女は香奈の髪を結っていた。
モデルとなったのも、香奈の髪を編むためだった。

ほどけないように、離さないように。

けれど彼女たちの関係は、
「見たいものだけ」を撮るカメラマンの日向の登場により一変する。





ハッキリとは描かれていないため、私の解釈になりますが。
結妃が織る香奈の布は、解かれたのだと思います。
それでも、結妃は手放すことが出来なかった。その糸の端に、香奈がいなかったとしても。香奈が、1本の糸になりたがっているのを知っても。

あの日を、あの夕日を、あの時の全てを。
たとえ香奈の髪が、自分の手から零れたとしても。
紙の上には、艶めかしく、激しく交情したままに。