颯爽と飄々をないまぜにしたような吉田さんのささやかなトリックが、タイムマシンを現実のものにしてくれる。見慣れた単なる日常の風景を、知る由もない過去の、とは言え何故か懐かしさを感じる、なんだか不思議な情景に変えてしまうそのトリックが、さざなみみたいに柔らかく、心に沁みてくる。武蔵野台地の南の端、吉祥寺という街以外にも、私も含めた読者にとっての『タイムマシン』がありそうだと、わくわくさせられて、探し回ろうと散策に出かける衝動を、良い意味で、押しつてくるものがたり。
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