最終話 手紙の謎
アヴァロンのセントラルにて。トボトボと彷徨う小さな狸の姿があった。石化の精霊スコールである。
『ロアめ、我を5年後の未来に連れてくるなど現金にも程があるだろう。グレイも散々手を貸してやったというのに我の行き先も考えずにほっぽりだすなど虫が良すぎる。ああ、世界中を探しても我以上に報われぬ者はどこにもいるまい。』
スコールは5年前の過去にてロアに宿りそのまま未来に連れてこられた。結果、グレイに契約を破棄されても長年主を失っていた神殿は壊れ廃れており帰る場所も行き先もないのである。
宿主も神殿も失ったスコールは悲しい程に弱体化していた。以前は魔力により赤い輝きを放つ石の体であったが今はもうその体を維持する力もない。二足歩行できる珍妙さはあるものの見た目は完全に狸である。
『むむ?考えてみると神殿が廃れた今封印されることなく自由に出歩くことができているのは我くらいなのではないか?そうだ、我は精霊史上最初に自由を手にした存在、つまり自由の精霊スコールとなったのではないか!?』
うおおおおお!とスコールの中の全スコールが快哉を叫ぶ。自由の精霊スコール。なんとかっこいい響きなのだろう。
『それならば我は旅に出るとしよう!世界中の精霊達を巡り目の前で自由の舞を披露してくれよう!我は自由の精霊スコールであると全世界に名を轟かせるのだ!!』
うおおおおお!!と顔を赤らめ大興奮する。そんなすっかり舞い上がったスコールの顔にどこから飛んできたのか未確認飛行物体が張り付いた。
『わぎゃあああああああああああ!!!』
『石化』
驚きすぎてつい『石化』の能力を発動してしまう。弱体化した状態でできることとしては自分に触れる小さく無抵抗な物を石化させられるくらいである。
未確認飛行物体の正体は手紙だった。開かれた状態で石化し地面に落ちる。
『貴様あああ!我が自由の精霊スコールであると知っての所業か!?現金にも程があるぞおおおお!!』
無論、返事はない。改めて見ると四つ葉が描かれており古ぼけたところも良い味を出した石碑と化していた。
『むむ、有償であることをつい無償でやってしまった。どれどれ、紙に猫の足跡と言葉が書かれていたのか?成程、番いとなる面々が紙に残すあれか。それにしても猫と誓いを立てるとは現金な者もいたことよな!ははははははは!』
なんとなく気に入りその石碑を近くにあった木に立てかける。これを見たら金貨1000枚払えよと。そんな思いも込めて。
『さあ、行こうではないか!自由に!』
自称自由の精霊スコールは世界を巡る旅に出るのだった。
◆
その誓いはそのように本人達の知らないところで石碑となりしばらく残ることとなる。
『ずっと一緒にいたい』という想いの込められた器用な足跡。その下には不器用な言葉が書き足されていた。
『同じく』
⭐︎あとがき
完結までお読みいただきありがとうございました。初のしかも長編の作品でありましたが皆様のおかげで完走することができました。
ユリ「ちょっと待ってください。誰の恋も実ってないのに完結ってどういうことですか?」
これからの執筆活動についてご案内です。
①ギャグの外伝を書きたい。
②ギャグ書きたい。
シロナ「いやいや、ラブコメメインの外伝書きなさいよ。ちゃんとハッピーエンドの。」
と、いうことで現在魔法学校編というギャグの外伝を進行中です。興味のある方は是非遊びに来てみてください。この度は誠にありがとうございました♪
ユリ、シロナ「「話きけ!!」」
器用に、不器用に! もりすけ @morisuke77
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