84.鬼の特殊能力
俺は奈落の森にある、鬼の集落を訪れていた。
そこには5人の鬼がいた。赤い兄妹鬼、青、白、紫の5人の鬼だ。
「おのれ化け物め!」
紫の鬼が俺を見て叫ぶ。
「え、化け物? どこ」
「貴様以外にどこにるというのだ!?」
え、俺? 化け物?
【是】
俺の脳内で叡智の神ことミネルヴァさんが肯定してくる。
「いや、人間だけど」
「我らから一瞬のうちに武器を奪っておいて、人間を気取るか!」
紫の鬼が言うと、残りの鬼たちもうなずく。
いやあれくらい普通でしょ、剣聖の時代だったら相手の武器奪って殺すなんてみんなやってたし。
【告。マスターがご活躍なさっていた戦国の世は、今世よりも武術のレベルが高かったのです】
いやでもそれにしたってねえ。鬼って人間より強いんでしょ?
これくらいはできるんじゃないかと。
「鬼術を使うぞ、おまえら」
リーダーっぽい、赤い男の鬼が言う。
きじゅつ。それは鬼の持つすんごい異能らしい。
「そう、それ! それが見たかったのよ!」
鬼の持つ特別な力、それがどういう魔法なのか身をもって知りたかったから、こんな森の奥までやってきたのだ。
「殿下! 助太刀を」
護衛として俺のそばについてる女騎士、アーシリアが言う。
「アーシリア、下がってろ。手出しは不要だ」
「しかし相手は5人……」
「だからなんだ? 俺が全員相手する」
「殿下……わたしではかなわないから、お一人で」
馬鹿なこと言うんじゃない。
俺は5人全員の異能を受けたいのだ。
邪魔されてたまるか。
【告。マスターの魔法馬鹿っぷりを常人には理解できないので、きちんと言葉にした方がよいかと】
誰が魔法馬鹿だ。
俺は普通だ。
【草】
赤鬼兄妹が後ろに下がり、残り青、白、紫の鬼たちが前に出る。
【告。女の赤鬼から魔力を感知。どうやら特殊な魔法を発動させるようです。移動阻害系】
いいねえ!
【忠告が聞いてなくて草】
「どうしたこいよ? それともびびってんのか? こんな子供相手に?」
「ふざけたことを!」
紫鬼が俺に向かって来る。
ほそっこい女の鬼だ。
素手で何ができる? 教えてくれ!
「ふんぬぅ!」
右腕を思いきり振りかぶり、俺に向かってパンチを繰り出す。
どごぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!
地面が陥没するほどの膂力。
そして周囲の木々を吹き飛ばすほどの衝撃を発生させた。
「はは! すげえ! その細い腕ですんげえパワーだな!」
「そ、そんな!? 100倍の腕力だぞ!?」
俺は小指で受け止めている。
どうやら闘気で体を強化してるんじゃなくて、異能でパワーを底上げしてるようだ!
すげえ、これで闘気をつかったらもっとパワーアップできるじゃないか!
「鬼族1のパワーを受けてびくともしないとは!」
「いいねえ、最高だ!」
俺はとんっ、と紫鬼をつついて吹っ飛ばす。
「次はわしがお相手しようかのぉ」
白鬼のじいさんが俺に近づいてくる。
懐から取り出したのは小刀だ。
予備動作なしで突っ込んでくる。
早い、って感じじゃないな。
「ほぉ! これを止めるか、小僧!」
俺は手刀でじいさんの小刀を受け止める。
闘気で体を鋼のように強化しているのだ。
「ならば、ふん!」
じいさんがすさまじい速さで連撃を放ってくる。
そのすべてが死角からの攻撃だ。
「なるほど、相手の視線を操作する力か!」
「ほほぉ! それを見抜くとは! いやさすがだな小僧」
視線を無理やり誘導させて死角を強制的に作るなんて、いやぁ、すげえな!
だが死角から攻撃が来ると分かっていれば、回避するのは造作もない。
だって攻撃を当てられる場所なんて限られてるんだから、そこを防御すればいいんだからな。
【マスターの言ってることが叡智の神でも理解できない件について】
そんなに難しいかぁ?
「獲った!」
「よっと」
突如、影の中から青鬼が現れて、俺の大腿部をナイフで切り付けようとしていた。
俺はジャンプしてよけた。
「…………」
青鬼がびっくり仰天してる。
いやしかし他人の影に入る魔法かぁ! いいねえ!
「ほっほ、小僧。わしの連撃をうけながら、こやつの影からの完全な一撃を防ぐなんて」
「そりゃあどーも」
じいさんの腹を蹴飛ばし、青鬼の顎を蹴り上げる。
一瞬で二回のけりを放った。
「よし、あとはあんたらだけだ」
兄の鬼がじり、と一歩下がる。
「あ、兄貴……やべえよこいつ……」
「おまえは呪術の準備をしていろ」
兄の鬼が俺に近づいてくる。
さて、本番だな。
ここまで部下にやらせておいて、力を貯めていたんだ。
さぞすごい魔法なのだろう。楽しみだぜ!
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異世界帰りの元剣聖、二度目は王子に転生し、魔法を極める〜恵まれた家柄と才能で世界最強〜 茨木野 @ibarakinokino
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