東京赤羽で昔ながらの焼き鳥②~ぶらり一人飲み~

少し脂ぎっているメニューを開き、串を確認する。

焼き鳥一本約130円。

部位によって多少の上下はあるが、これくらいがちょうどいい価格帯なんじゃないだろうか。

高すぎず、安すぎずサラリーマンの小遣いでも十分楽しむことができる。

メニューを選べば「せんべろ」も可能な価格帯だ。


「お待たせいたしました。お通しの鳥皮ポン酢です」

きた、お通しだ。

初めて来た店では、こいつにいつも悩まされる。

はじめましての一品なのか、適当な業務用なのか、出てくるまでわからないからなあ。

うん。この店はどうかな。

なるほど。

鳥皮を揚げて臭みをとり、玉ねぎとポン酢であえてあるのか。

これはいいぞ。

揚げ物パワーでビールがどんどんすすむ。

よーし乗ってきた。


「すみません、注文いいですか?」

「はい、大丈夫ですよ!」

「えーっと、ねぎま、ハツ、あとレバーください」

一人で飲む時くらい少しずつ頼んでゆっくりと味わいたい。

それくらいいいだろう。

店としては一気に頼んでくれた方がありがたいかもしれないが、ここは客の特権をいかすとしよう。

ビールももうなくなってしまった。

ついでにおかわりももらうとしよう。


おお、あれが俺の串だな。

かなり年季の入った焼き台で焼かれる焼き鳥ほど、食欲そそるものはない。

赤く熱を帯びた炭に肉汁を滴らせながら、焼かれ燻されていく。

これはまずいぞ。

早く食べたくて仕方ない!

そういえば、近頃は高級料理店でもオープンキッチンの店が増えているらしいが、その発祥は焼き鳥や寿司かもしれないな。

日本料理ってやっぱりすごい。


――ゴトン

「お待たせいたしました。ビールとねぎま、ハツ、レバーです」

きたきた。

今日の主役のお出ましだ。

まずは焼き鳥の代名詞ともいえるねぎまから。

うんうん。

外側は焦げ目がついているが、中はしっとりとしており、最高の焼き加減だ。

「あつつっ!」

ねぎは焼くと中身がすごく熱くなるんだよな……

ああ、でも甘くておいしい。

これは……間違いなくビールだ。


次はハツか。

ハツって子供のころはなんの肉かわからなかったなあ。

食べようとも思ってなかったし。

そんなことに思いをはせながら早速いただこう。

プリップリだ。そりゃそうだよな。

心臓を食ってるんだから。

生命の躍動感を感じる一本だ。


三本目。

最後はレバーだが、この焼き加減によって本日の満足度が決まりといってもいい。

火が入りすぎてパサパサになったレバーだと最悪。

しかし、中身が少しレアな状態だとこれが絶品だ。

さてさて、今日はどっちかな?

んん?

これは久々の大当たりだ。

中身がトロリと溶け合い、表面はさっくりと嚙み切ることができる。

ごま油に塩を振ったものに付けて食べる方法もいい。

ごまの香ばしい香りをまとったレバーって最高じゃないか。

タレでも塩でもなく、こんな食べ方があったとは……


残りのビールを一気に飲み干し、大満足な俺は会計を済ませた。


さて、二件目に行くか。

せっかく赤羽に来たのだから数件はしごしよう。


ああ、今日もいい日だ。

そういえば明日締め切りの資料、まだつくってなかったっけ。

……まあ明日のことは明日考えようか。

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至高の一人飲み Sの人間模様 @ogino78

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