第※話 秋茜の幸せな夢

「ユウくん…ユウくん…」


 遠くで誰かが僕を呼ぶ声がする…。


 ゆっくり目蓋を開くと、白い光が視界を満たした。


「検体U、意識が覚醒しました。

 追加の薬剤投与をお願いします」


 急に知らない声が聴こえた。視界はまだ戻らないままで、ワケも分からず、起き上がろうとすると、身体が動かない。手足をベッドに固定されてるみたいだ。


「…何…何なんですか?!

 こ…こは一体…何処…なん…ですか?!」


 張り上げた声は、何年も喋っていなかったみたいに酷くかすれていた。むせた僕が咳き込んでいると、口に何かを被せられた。シューッと音を立てて、何かのガスが吹き込まれている。


「…待っ…て…誰か…助け…て…」


 ぼんやり薄れる意識の中で、誰かが僕に囁いた。


「あなたが望んだ夢ですよ。

 可愛い女の子に囲まれて過ごしたいって」


 そうだ。僕が望んだんだ。

 首から下と引き換えに、夢の世界で余生を過ごせる検体を。僕の夢は誰かの元にフィクションとしても届けられるらしい。

 だけど、これでよかったのだろうか。自分の答えが出る前に、僕は夢の世界へと落ちていった。


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茜色した思い出へ おくとりょう @n8osoeuta

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