第113話 ここに在り

 次期当主の予定だった両我りょうがの遺体はない。だが、その死はおに達との契約の解除を証拠に認められ、全てが落ちついた今日、り行われることになった。


 今回ばかりは正式な隊服に身を包んだ鬼神おにがみ空飛あきひ等依とういが入り口前で待っていた。


「思ったより早かったな……」


 鬼神おにがみの言葉に五奇いつきは苦笑しつつも、着替えた隊服に身を包んで葬儀へとのぞんだ。終始、麗奈れいなが泣いていたのが印象的で、切なかった。


 ****


 その後。

 麗奈れいなはトクタイに残り、今まで通りCチームとして美珠みしゅ雅姫まさき琴依ことえと戦う道を選んだ。Aチームは両我りょうがのかわりに空飛あきひが加わることなり、等依とうい蒼主院そうじゅいん家当主の座にくことが決まったことからEチームは解散。五奇いつき鬼神おにがみは、二人でルッツの所属する情報部へと移動になった。

 ちなみに、虎雷雅こらいが達は治療薬が開発され、無事に少しづつだが人間に戻れているらしいと、齋藤から聞いた。


「はぁ~ここで四人で暮らすのも最後かぁー」


 すっかり片づけられた家で、四人はリビングにてくつろぐ。正直、両我りょうがの死をまだ乗り越えられてなどいないが、前に進まなければ彼の死が無駄になってしまう。


「んで? 空飛あきひちゃん、サーシャちゃんの今後は?」


 等依とういけば、空飛あきひが嬉しそうに答える。


「はい。罪をつぐなうべく、トクタイの処理班に入ることになるそうでございます。もちろん色々な制約付きでございますが!」


 半身が少しでも社会に出られることが嬉しいのか、空飛あきひの機嫌がいい。更に、玉髄ぎょくずいを救う方法も前向きに進んでいるから、なおさらだった。


「しっかし、てめぇがAチームとはなぁ。おちこぼれから大出世じゃねーか……おい、ひつぎに迷惑かけんじゃねーぞ!」


 彼女なりの心配は空飛あきひには相変わらず届かなかったようで。彼は小首こくびかしげながらく。


「はて? 迷惑かけたりしてませんと思いますが?」


 困惑する彼に五奇いつきは、思う。


(これ、絶対愛原あいはら君と二人でなんか困らせてるなぁ……)


 輝也てるやひつぎの胃を心配する。そんなことを思っていると、等依とうい五奇いつきの肩を軽く叩く。


五奇いつきちゃん。解散の挨拶、リーダーらしく決めてちょー」


「お、いいじゃねぇか。五奇いつき、やったれ!」


 等依とういの提案に乗る鬼神おにがみに、苦笑いしながらも五奇いつきはリクエストにこたえることにした。


「えーっと、俺達、おちこぼれだったけど……さ。色々乗り越えて、ここまで来たわけで……だから……その! 最後にチーム名、記念に決めませんか? ほら、Cチームが緋雲あけくもだったみたいに!」


 五奇いつきの言葉に納得したのか、三人がうなずく。それを確認すると、五奇いつきが咳払いをして続ける。


「実は、その。考えていたんです。だから、いいかな……。俺達のチーム名は……」


 五奇いつきの案に全員が賛成し、チーム名が決まった。更なる記念にと、写真も撮る。文字も最後にと入れてみた。


『チーム、落零らくれい! ここにり!』

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落零〈rakurei〉~おちこぼれ達の退魔伝~ 河内三比呂 @kawacimihiro

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