宮廷画家と征服王

作者 つるよしの

63

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★★★ Excellent!!!

故郷である「ムサシノ(武蔵野)」の絵を描けと命じた転生者である覇王。
それを命じられた異世界の宮廷画家である主人公。
武蔵野を描けという、異世界人にとって無茶ぶりとも言えるような難題を課された主人公の視点で物語は進んでいく。

この物語の凄い所は、武蔵野を扱っているのに武蔵野自体の描写が必要最小限に留まっているところ。
しかし様々な事情で後に引けない主人公が全霊で難題に挑む姿は、直接的な描写の有無に関わらず読者の武蔵野への関心・興味を否が応にも引き出してくれる。
こういう興味の持たせ方もあるんだと膝を叩く思いでした。

そして難題を巡る王と宮廷画家二人の物語もまた良い。
主人公は絵を完成させる事が出来るのか。難題を承知で命じた王の思惑は。

短くも読みごたえがあり、爽やかでありながら複雑な後味を残す、武蔵野×異世界の名に恥じぬ作品でした。

★★★ Excellent!!!

 二人の男性のやり取りから始まるこの物語。戦記物を彷彿とさせる重厚な語り口ですが、主人公が宮廷画家という職業であるから、血なまぐさい話にはならないと思いきや……?

 どうやらこの国の新王となった男は、依頼する絵の出来如何で将軍たちの処分を決めるという。突然その双肩に重荷を背負う事になったアルフレッドの運命やいかに!?

 この文字数で魅力的なキャラクター像を描き出し、緊張感ある展開、それでいて何故だか読者もムサシノってどんな所だっけ? と興味が惹かれるという。
 新王の説明が言い得て妙というか、それ以外言いようがないしで。
 武蔵野という土地のイメージを表現し尽くしながらも、ライトノベルらしい異世界転生の要素も織り交ぜられているという、短編とは思えない濃厚な後味の作品。

 人生への示唆にも富んでいて、一読の価値ありです。

★★★ Excellent!!!

転生してきた新王が、宮廷画家のアルフレッドに命じたのは「ムサシノの絵を描け」という難題。
緑の濃い台地、肥沃な畑、そしてその上に建物があるという「凡庸だが全てのものがある土地」を描けと言われたアルフレッドは、その難題に苦悩することになります。

私達現代人から見れば容易く想像できる「武蔵野」が、異世界の人物の目を通すと、都市なのか田園地帯なのかもわからない「ムサシノ」になる視点が非常に面白かったです。

難題と向き合うアルフレッドと、その姿勢に対する新王の答え。
ぜひ一読していただきたい作品です。

★★★ Excellent!!!

 新王がムサシノ出身……!?

 トウキョウ、サイタマと何やら馴染みのある地名に言及はされるものの、この物語では、その地のことはほとんど具体的には語られません。ただ、世界統一を果たしたばかりだという新王が、自らの故郷として、宮廷画家に語るのみです。

 彼は、画家に曖昧な言葉のみで己が故郷を語り、それだけで、絵を描け、さもなくば敗残の将達の処分も危ういとそう脅しとも取れる要求を突きつけます。

 難題を突きつけられた画家のアルフレッドは、それでもその課題に真摯に向き合いますが、用意に描けるわけもなく。やがて、期日の十日後、疲弊しきった彼の前に現れた王が語ったその真意とは——。

 4000字未満という字数とは思えないほど様々な心の動きが繊細に描かれ、かつ、転生者というギミックをとても巧みに使って「武蔵野」が見事に昇華されていました。

 まさに武蔵野ライトノベル……!
 おすすめです!