第13話 待ち望んだ過去の想いとまだ見ぬ遥かなる未来


「俺たちも行くか?」


「ちょっと待って…これ…履き替えるから…。」


といって透明の袋から下駄を取り出し、白い青いアサガオの飾りがついたビーチサンダルとを履き替えた。


「足…痛いんじゃないのか?そのままでも…。」と黒崎くんが心配そうに言う。


「ううん…このビーチサンダルはね…私にとってもう…大切なものだから…。」


黒崎くんが優しく微笑む…。


「送っていく…帰るぞ!」


「うん!」


下駄に履き替えた私の足取りはあの時とは違い…軽やかだった!



「今日はいろんなことがあったな…。」


「うん…みんなの本当の気持ちがわかった1日だったよね…。まさかみゆちゃんもこんなにみんなのこと考えてくれてたなんて!」


「桃田ってほんとにそうなのか?偶然とか…なんかそんな雰囲気じゃなさそうなんだけどな!」


「私たちもそう思ってた…。でも正直なに考えてるかわかんないとこもあったりするのよね…。」


その真相はわからないけどね…。


「それより赤井くんが黒崎くんの気持ちに気づいてたなんてびっくり!」


下を向いて少し赤くなってる黒崎くん…ちょっとかわいい…。


「あいつは勘がいいからな…でもまさかな…。」と考え込んでいる。


ほんとにそう…こんなことってなかなかないよね…。

これって…神社の言い伝えの力ってこともあったりするのかな…。

まさか…ね…。


そんな話をしている間に私の家の玄関先に着いた。


「送ってくれてありがとう!楽しかった!」


「俺も…」と黒崎くんがじっと見つめてくる…。


私はゆっくりと瞳をとじた…。


その瞬間!!

ドアの向こうから父さんの声が!


「優…帰ったのか?」といってドアを開けてあわてて父さんが出てきた。


「父さん!!」


「遅かったじゃないか…心配したんだぞ!ん…誰だ?きみは?」


その後から母さんが追いかけてくる。


「ちょっとあなた…そんな慌てなくても…。あら!」


まさか…黒崎くんといるところを両親にみられるなんて…気まずいよ…。


「初めまして。同じクラスの黒崎純といいます。白瀬……優さんとは今日から真剣にお付き合いさせていただいてます。」


と真剣な表情で父さんと母さんにむかって挨拶してくれた。動じることなく…。

わたしは内心…えー!!今ここで?と思ったけど…ちょっぴりうれしかった!


「な、なに?黒崎って…まさかあの黒崎か?親友の?」と父さんが動揺している。


「はい。俺はその息子です。」


父さんはしばらく黙っていた…何かを考えているかのように…。


「そうか…俺の…俺たちの想いが叶うとはな…。」


それはかつて…父さんと黒崎くんのお父さんが高校生だったころのお話…。

それぞれの彼女…母さんたちをつれて…あの言い伝えの神社の境内で花火を見たとこから始まったらしい…。そして言い伝えどおり…それぞれ結婚し子供が…。同じ年に産まれた私たちはそれぞれ男の子、女の子だったので父さんたちはいつか…2人が一緒になれることを密かに夢見て…今日まで過ごしていたらしい…。もちろん…お互い意識しないようにそのことは伏せて…ってことらしいけど…。


「あいつ…あれほど言うなよって約束したはずなのに…なんだよ…まったく…。」


と黒崎くんにいつも言い伝えのことを楽しく話をしていたことを知り…父さんがへこむ…。


「父が…すいません…。」と黒崎くんが…。


父さんはちょっとおどろき…そして黒崎くんに話しかける。


「きみはあいつとは違ってしっかりしているな…。あいつはだめだ…約束を守れないやつだ…。でも君はちがうようで安心した…。」


「俺は約束は守ります…。」


「そうか…。じゃあ…大切な娘の優を…よろしく頼むな…。」


「はい…。」


私はなんだか気恥ずかしくなってたけど…そのやりとりをみて初めて…自分が大切にされている存在だと感じていた…。


父さんと黒崎くんの話が終わったところを見定めてか…微笑んでいたみていた母さんが父さんの肩をトントンと叩いた。


「私たちおじゃま虫はそろそろ…ね!」と母さんが私にウィンクする!


「いや…まだ…」という父さんの腕を強引にひっぱって家の中に…。


「ごゆっくりー!」といって母さんがドアをしめる。



私たちはお互いに次…話す言葉を探していた…。


「いいご両親だな…。」


「あ…いつもあんな感じ!でも大好きなの!」


「そうか…。俺たちもいつか…あんなふうになれたらいいな…。」


そういって…黒崎くんは私にそっとキスをした…。

ふいに黒崎くんからでた言葉に…私は幸せを感じた!まだ見ぬ自分の未来に!






それから8年…



私と黒崎くんは結婚した!



「お前なにやってんの?そんなの俺がやるから座ってろ!」


と食器を集めてキッチンにもっていこうとする私からとりあげた。


「大丈夫だよ…ちょっとは動かないとだめなんだから…。」


「落として怪我でもしたらどうすんの?いいから俺にまかせてろ!」


心配性なのは相変わらずだけど…昔と変わらずとっても大事にしてくれている!

そして…私たちにはもうすぐ赤ちゃんが産まれる…。


まだ見ぬこの子にも…いつか…あの言い伝えを話そうとおもう…。

でも大きくなるまでは秘密…恋ができるその時まではね…。



えっ…あの白いビーチサンダルはって?

透明なケースにいれて今も大切にリビングに飾ってる!



だって…私たちの大切な…たからもの…だから…


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白いビーチサンダルがもたらした奇跡! 水天使かくと @sabosuke

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