第12話 男子たちの本音と1番の策士


「な、なんでみんなが?どうしよう…黒崎くん…。」


と黒崎くんを見るとやっぱりポーカーフェイス…。


「慌てんな…。」


「恥ずかしいからもう降ろして!」


「こんな中途半端なとこで降ろせねぇ…下まで我慢しろ!」


そう言われて私は言い返せず…そのまま抱きかかえられたまま残りの石階段を下っていく…。


みんなに何ていえば…なんて説明すれば…私の頭の中は焦りと戸惑いと恥ずかしさでもう…ぐちゃぐちゃだった…。


下まで降りたと同時にみんなが駆け寄ってくる。


「ゆうちゃん大丈夫?黒崎くんいったい何があったの?」


と今度はなっちゃんが黒崎くんに詰め寄ってきてて赤井くんにまあまあ…とさとされていたのが分かった。


黒崎くんが私をゆっくり地面に降ろしてくれる。


「ありがと…。」とうつむき加減で私は黒崎くんに言いながら…みんなになんて説明しようか必死で考えてた…。


「えっと…これはね…じつは…」としどろもどろに言った私の横で黒崎くんが言った。


「俺たち…つきあうことになったから…。」 


そのはっきり言った言葉に…私も…そしてみんなもしばらく固まったまま…何も言えずにいた。


その中で先陣をきったのはみゆちゃんだった。


「へぇー!そっかそっか…そうなんだぁ!ゆうちゃんと黒崎くんがねー!よかったじゃん!」


とまるでわかってたかのように満面の笑顔で言ってくる。


「ゆうちゃん…本当なの?黒崎くんとって…。」


なっちゃんが半信半疑で聞いてくる。


「う、うん…ちょっと…いろいろあってね…。」


と私も頭がまだ整理できてない分、まだうまく説明できないんだけど…。

それを悟ってくれたのか…なっちゃんがにっこり笑う。


「そっか…よかったね!またゆっくり聞かせてもらうからね!」と言ってくれた。


その横で黒崎くんがちょっと複雑な表情で言った。


「ところでお前ら…なんでこんなとこにいるんだよ?」


そうだった…なんでみんなここにいたのか不思議だった…。

すると京也くんがすかさず言った。


「何言ってんだよ!白瀬が帰ったあと…お前も白瀬が心配だからって帰るもんだから、みゆも青野もそのことが気になって花火どころじゃなかったんだよ!とりあえず花火のフィナーレが終わってすぐ帰ろうってことになって…。まっすぐ歩いてきたらお前らがその階段から降りてきたんだろ!」


「そうか…悪い…。」と黒崎くん。


「私もごめん…。」とみんなに謝った…。


そう…だったんだ…。

っていうか…私が心配だった?


「でも黒崎くん…みゆちゃんとなっちゃんに送れって言われたって…。」


「おい…。」といいながら黒崎くんがめずらしく慌てて…目頭を押さえてる。


みんなはそれぞれ顔を見合わせながらくすくす笑っている!


「純はほんと素直じゃないんだなよな…白瀬のことが心配なくせにそんな風に言っちゃって…。あっ、好きなくせに…の間違いか!」


と京也くんがにやにやしながらここぞとばかりに黒崎くんをからかう!


「京也…お前な…!!」


とますます黒崎くんはむきになってるけど…そのやりとりはちょっと楽しそうに見える!

男子の親友同士っていつもこんなふうなんだ…。

私たちにはわからない…絆?…みたいなのがあるんだね!きっと…。


やっぱりあの時って…私のために怒ってくれてたんだね…嬉しい!


「もう…2人ともやめとけって!女子もいるんだぞ!純の片想いが叶ってよかったじゃないか!あっ…。」


といって赤井くんが2人の間に仲裁に入ってくれる…意味深な言葉を放って…。


黒崎くんがおどろき…赤井くんをみる…。


「知樹…お前…いつから知って…?」


「うーん…図書室で白瀬さんに会ったあとくらいからかな…気がつくと純…よく彼女を目で追ってた気がして…ぼくの勘だけどね…。」


と赤井くんは笑った。


黒崎くんは観念したようだった…。


「京也…お前も?」


「お、俺は知らねえよ…全部みゆに言われて…。なぁ…みゆ!」


私たちはおどろき…一斉にみゆちゃんをみる!!


みゆちゃんはきょとんとした表情で…


「ん?わたし知らなーい!それより…みんなハッピーになったんだからよかったじゃん!ね!」


とくったくのない笑顔でそう言われてみんなはもう…それ以上なにも聞けなかった…。


私はなっちゃんと顔を合わせ…お互いに笑った!

だって…この最後の夏祭りの1番の策士は…いつもおっとり天然な…みゆちゃんだったってこと?

なんだかんだいって…私たちのことを1番そばで見ててくれたのは…みゆちゃんだったんだ!


私は思いがけない結末にもかかわらず…なぜか気持ちがほっこりと和んでいく自分を感じていた…。

おそらく周りのみんなの表情も和んでて…きっと同じ気持ちだったのだろう…。


「じゃあ、みんな帰ろ!私、京ちゃんに送ってもらうからここで解散ね!じゃ、また明日ー!行こ、京ちゃん!」


とみゆちゃんがテンション高く言った!


「お、おう!お前らもちゃんと女子、送ってけよ!じゃな!おい、待てよ…みゆ…。」


とあわてて京也くんもみゆちゃんの後を追ってった。


「じゃあ、僕たちも帰ろっか…。」と赤井くんが言った。


「ゆうちゃん…今日のこと…ほんとにごめん…でもありがとう…。」


となっちゃんが私に言う…。


「ううん…今日1日でたくさんのことに気づけた日になったよ…。1つが欠けても…たぶん黒崎くんとこんなことに…なんてならなかったと思う…。私のほうこそ…ありがとう…。」


この気持ちはほんとだった…。


黒崎くんと話をしていた赤井くんがこちらにきて私に言った…。


「白瀬さん…今日はいろいろとごめん…。それと…純の気持ち…引き出してくれてありがとう…。あいつ…いつも自分の気持ちは後回しで抑えてるから心配だったんだ…あいつをよろしく!」と小声で…。


「じゃあね…また明日ね!」といいながらなっちゃんと赤井くんが帰っていく。


私は2人に手をふり、黒崎くんと2人で見送った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る