見捨てられた私たちの月

白河 あらた

友人


 私は自分が嫌いだった。

 鏡を見ていつも憂鬱になる。


 でも最近は何だか気分まで軽い。

 私は今、月面にいた。



 ことの始まりは、地球に宇宙人がやってきた所から。


 その宇宙人たちは友好的で、おかげで地球上から戦争がなくなった。まぁ、身内同士で戦ってる場合じゃなかったんだろう。


 皆で仲良くしましょう。


 そういったところで、地球人たちは思った。


 どうしよう。


 宇宙人たちは犬や猫と同じ姿をしていた。


 しかし人間と同じ大きさで、二足歩行で歩く。


「あなたたちによく似た生き物がこの星にもいるのですが……」


 言いにくそうに地球の代表として宇宙人と話していた大統領や王様たちは言った。


 宇宙人たちは笑って、


「いやいや、私たちもあなたたちに似た生き物を飼ってますから大丈夫ですよ」


 何とも言えない空気が流れた。


 そこからはお互いに協力することになったという。

 人類は月面に住めるようになったし、宇宙人は地球によく観光にくる。


 でも誰かが思う。


 人間と宇宙人の二つの要素を持てば、それはより優れた人間ではないのか。

 宇宙人も少し興味があったようで、お互いに協力して研究することになった。


 獣人の完成である。


 今の社会ではそれなりに浸透している、が。耳や尾、少し力が強かったり普通はそのくらい。でもほとんどが従来の地球人で、そういった人たちの能力はほとんど生活の役には立っていなかった。


 私は、まるで当時の宇宙人を大きくしたような容姿をしていた。

 猫の着ぐるみが歩いているような様だ。


 人間の社会には溶け込めず、かといって宇宙人ではない。どこにも居場所がなかった。


 周りの勧めで私は月に行くことになった。


 月は宇宙人と地球人、どちらにも居場所がない人がよく行くところらしい。

 人生観が変わるとかなんとか、宇宙スケールのインドだろうか。


 結局、地球に戻ったりそのまま住み着いたり、宇宙人の星に行ってしまうものも。現状維持よりは良いだろうということだ。

 

 月へ行く宇宙船の片道切符を渡された。

 帰りの分はない。


「ふん」


 私は最後まで見送りにこなかった家族を思った。

 私のせいで苦労をしているのを見ていたから一方的に責めるのも忍びない。


 月面基地には少数の人が暮らしていた。


 ほとんどがどちらかの要素が強くでている。


 管理している人は定期的に交代し、その度に基地の人数も変化していった。


 しばらくの後、私は古参と呼ばれるようになっていた。


「君、家に帰らないの?」


 地球人に話しかけられた。旅行者か、そう思ったがどうも見覚えがある。


「切符、片道分しかもらえなかった」


「そう、僕もなんだ」


 私たちは遅くまで話した。


 何で今まではなさなかったんだろう、そう思うくらい意気投合した。


「一回地球で暮らしてみたら?」


「やだよ。僕は地球人ではないからね、旅行に行くならまだしも。君こそあの船に乗って僕らの星に行ってみたら?」


「断固として断る。私はあの星で生まれて育ったんだもの。嫌いになって出てきたんじゃないの」


「はぁ……、僕ら交換できたらいいのにね」


「そうだね」


 彼も私も同じなんだと思った。彼は犬や猫たちの姿がほとんどの場所で、人のような姿で生まれてしまったんだ。


「僕らはいきつく先は同じなのかもしれないね」


 私たちは笑った。


 彼も私も月から離れることなく、そのうち月で仕事を見つけて働き始めた。最近は、お金を貯めてお互いの星に遊びに行こうと話している。

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