メグちゃんのこと
その日の午後、マヤさんは保育園へ行きました。
保育が終了するまでの間、担当の先生と面談をするためです。
マヤさんはメグちゃんの食事や生活の仕方等、いくつかの事情を保育士さんにお話しました。
面談をしてくれたのは、今年の春、短大を卒業したばかりのナツミ先生でした。
すでに病院から保育園へ連絡があったので、ナツミ先生はもう把握してくれていました。
「メグちゃんは本当に元気いっぱいですよ。お友達とも楽しく遊んでいますし、何でも興味を持って一生懸命やっています」
「ありがとうございます。他のお子さんと馴染めるか心配だったので、安心しました」
マヤさんはナツミ先生の目をしっかりと見て話を続けます。
「それであの、入園の時にも園長先生には伝えましたが、今日はナツミ先生にも一度お話しておきたいと思いまして…」
「あ、はい…」
ナツミ先生は一瞬間をおいてから尋ねました。
「メグちゃんの養子縁組の件ですか?」
「ハイ、そうです」
マヤさんは少し緊張した声で答えました。
「園長から伺ってました。確か身元不明で、乳児院で養育されていたそうですね」
「はい、生後3ヶ月くらいの時にその乳児院から我が家に迎えました。最初は里親でしたが、こちらへ入園する前に養子縁組を認められて、入籍したばかりです」
「実の親御さんは未だに見つかっていないそうですね」
「ハイ…」
ナツミ先生はマヤさんの表情を見て、少し違和感を感じました。が、すぐに
気持ちを切り替えてマヤさんに言いました。
「今のお話も、メグちゃんの食事や生活についても、園の方では保育士全員が情報を常に共有しておりますので、どうぞご安心くださいね」
「ありがとうございます。どうぞよろしくお願いします」
マヤさんは深々と頭を下げました。
保育が終了したらしく、玄関が賑やかになってきました。
ナツミ先生とマヤさんも、一緒に玄関に向かいました。
「ママァ〜!」
メグちゃんが自分でお絵描きした画用紙を広げて走ってきました。
「先週のハロウィンパーティーの思い出をお絵描きしたんですよ」
ナツミ先生は絵を見て言いました。
「このネコちゃん、メグちゃんに似てるネ。かわいいね」
メグちゃんはニッコリして
「そう!これメグ!」
絵に描いた黒い子猫を指差しました。そして、
「これ、ママ!ママだよ!」
メグちゃんは一生懸命描いた魔法使いらしき人を指差していました。
マヤさんは、
「そう、そう、これはママだネェ〜」
ククク…と笑いを必死でこらえていました。
魔女マヤさんの日常 清水川涼華 @fairy-tale
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。魔女マヤさんの日常の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます