第2.5話 神の救済(休載)

「うわぁぁぁぁ!」


本の中に吸い込まれた悟は、

文字通り空から降ってくるように

その世界へと落ちてきた。


痛ててて、マジで強引だよあの人


派手に着地(墜落)してきた悟の周りには

人だかり、いやゴブリンだかりが出来ていた。


わっ!ゴブリン!じゃあ、此処は!

本当に異世界なんだ~!!

悟が少し感動していると

明らかに「長老」的なゴブリンが話しかけてきた。


『もしかして、転生者様ですかな?』


「あ、はい!知ってるんですか??」


『もちろん、お待ちしておりました。

 先程、神様からお告げがありましてな

 

 使者を送るので、その者と協力して

 この世界を救ってくれと、、、

 その者の名前は「転生者」だと』


「いや、別に名前が転生者って訳じゃないんですけど」


まったく、適当だなぁ、、、あのオッサン、、。


そっか、俺が勇者的な役割で世界を救うって訳ね!


ベタベタな「RPG」のシナリオだけど、

そんなんが好きとか言ってたもんな、、、


でも、、、まずは確認だな!


「すみませーん、この世界って

 魔法とかスキルとか存在しますか?」


『はい、もちろんですじゃ、ホレ!』

老人はそう言うと、片手に「炎」を灯してみせた。


「おお!やったーー!!」


両手を突き上げて喜ぶ悟を見て

ゴブリンたちは不思議そうにしている。


「あ!すみません!つい嬉しくて!

 俺たぶんメッチャ強いんですよ!!」


「なんか、簡単な魔法とか教えてもらえません?」


『はぁ、では初級魔法の

「ファイアーボール」とかはいかがですかな』


「お、基本っすね~!

 難しい詠唱とか集中とか必要っすか?」


『いえ、呪文を唱えるだけですじゃ、ホレ!』

『ファイアーボール!』


老人がそう唱えると、その掌から火球が放たれ

道端に捨て置かれた樽を灰にした。


「おおー!結構な威力!!」


『一回出すごとにMPを3消費しますぞ』


なるほど!MP制ね!回復薬とかあれば

回数制限よりこっちの方がぜんぜん使える!


よし、じゃぁ俺もいっちょやってみっか!

「ファイアーーボーール!!」


、、、、。


「あれ?発音とか違ってたかな?」


『いや、あってましたぞい?』


「じゃあ、なんで出ないんだろう、、、?」


『なんというか、、、ソナタ様からは

 魔力がぜんぜん感じられないんですじゃ』


「へ?じゃぁ、オレ魔法使いとかじゃないのかなぁ、、、

 スキルもあるって言ってましたよね?

 それって、どうすれば使えますか?」


『どうって、、それも技名をいうのですが

 ご自身のを見てみてはいかがですかな?』


「見る??」


『ステータス!!』老人がそう叫ぶと、

老人の前に半透明のパネルが現れる。


おおー!カッコイイ!!

なるほど「そういう」方式ね!


『ここに書いておりますじゃろ?』

そう言って老人は自身のパネルを指さす。


パネルのスキルの欄には

技名と限度回数が書いてあった。


-----スキル-----

ひっかく:30/30 かみつく:20/20

切り裂く:14/15 共食い :9 /10


「へー、スキルは回数制なんだぁ、、、共食っ??」


悟が来る前にひと悶着あったのか、

「切り裂く」と「共食い」のスキルだけ

本日すでに使用されていることには

触れないほうがいいのだろう、、、


パネルにはスキル以外にも

詳細なステータスが載っていた。


---ちょうろう---

 ごぶりん

せいべつ:おとこ

レベル:88

HP: 850/850

MP: 797/800

------------------------

 ちから:453

すばやさ:503

etc…

-------------------------


レベル88!結構な強さ、、、なのか?

基準が分からないけど。


しかし、表記が古いな、、、


おそらく作者(神様:関)のゲームの概念は

平成初期で止まっているのだろう


レベル制だけど、おそらく

ステ振りとかスキルツリーとか

育成要素はないんだろうな、、、


とりま、自分のを確認してみるかぁ


「え、えーと、ステータス!」


悟がそう叫ぶと、彼の前にもパネルが出てきた。


-----さとる-----

 にんげん

せいべつ:おとこ

レベル:1

HP: 10/15

MP: 0/0

------------------------

 ちから:4

すばやさ:5

etc…

-------------------------


「うぉおぉぉい!!?」

「くそ弱えぇぇ?!レベル1だし!!」


「しかも、HPが減ってるし!!

 さっきの落下ダメージ入ってんじゃねーか!!」


明らかに嫌がらせじゃねーか!!

悟は天に向かって指を差し不満を叫ぶ。。。


肝心のスキルの欄は、、、


-----スキル-----

神様のお告げ:1/1


以上。


「はぁぁん??!」


血管が浮き出るほど怒りに満ちた表情の悟。


------- すると --------


天から光が差し込み、あの声が聞こえてきた。


『おー、無事に着いたみたいだなー』


「いや!無事じゃねーし!

 てかステータスどうなってんだよ!クソ弱じゃんか!」


『いや、いや、レベル1からだんだん強くなるのが楽しいんだろ!?』


「世代がちがうんだよっ!!」


、、、、。


『まぁ、それはとりあえず置いておいてだな、、、』


急に関の声のトーンが低くなる...

最初からテンションは低いが、

「やけに落ち込んだ声」で深刻そうだ。


『あれから必死に考えたんだが、、、

 この世界の内容がなかなか浮かばなくて、、、

 どうやら、「スランプ」っていうのになってしまったようでな』


「え?じゃぁ、オレどうなるの??」


、、、。


---- パァァァアァ----


空一面に映像が映し出される。


そこには、自分が入り込んだ本を持った関と

離れた所で手を振る

あのコスプレお姉さんが映し出されていた。


『大丈夫、ラスト部分はちゃんと書けてるんだ!』

関はそう言うと、本の最後のページを見せる。


そこには【そうして勇者は見事世界を救ったのでした!!】

とだけ書かれていた。


「え?でも途中が無いってことは、、

 もうクリアしてる?」


『いや、俺達の業界では最低12話分は

 転生者に働いてもらわないといけない」

 という決まりがあるんだ、、』


「アニメ1クール分じゃねぇか!?

 空白だとどうなるんだよ?」


『虚無に落ちる、、、

 それはもう地獄の苦しみだ。。。』


「なっ!じゃぁ早く書いてくれよ!!

 前回の使いまわしでいいからさ!!」


『いや!それはできない!

 使いまわしなど、このプライドが許さない!!』


「なんでそんな偉そうなんだよ!」


『俺はしばらく執筆を休む、、、』


「へ?じゃぁ俺はどうなるの??」


『安心しろ!!』


---ダンッ!--


関は、なにやら沢山の本を机の上に積んだ。


すると、おそらく他のブースからであろう

無数の声が聞こえてくる。。。


「あれー?一冊足りなーい」

「うちのも足りないぞ!」「俺のもだ!」


『おまえ、それ、まさか

 他の作家さん達の本じゃ、、、』


悟の悪い予感は的中した、、、


関は悟の本の最初と最後のページだけを切り取ると、

他の本を挟むように「のり付け」しだしたのだ


『あ、ペタペタ、それ、ペタペタ、、、。』

『フウっ、これで1年くらい時間が稼げるぞ♪』


「盗作どころじゃねぇぇぇ!無断転載!著作権侵害!

 おまえ!プライドは何処へいったぁぁ??!!」


『安心したまえ、、、これはあくまで応急措置だ!

 俺は必ず書き上げる!究極の一冊を!、、、いつか!』


「今『いつか』って言ったよな??ちょ、、待てっ」


『ふ、名作者は休載が多いって言うだろ?』


そう訳の分からない「迷言」を残こされ

関(神様)との交信は終了した。。。


-----スキル-----

神様のお告げ:0/1

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異世界 渋滞 山原 もずく @mozukune-san

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