尾八原ジュージ

 僕、昔から癖があってね。


 と、彼が言う。

 気に入ったものは何でも、机の鍵がかかる引き出しに収めておきたいんだよね、と。


 何でも? と聞くと、何でも、と答える。

 貝殻でも外国のコインでも、蝉の抜け殻でも丸い石ころでも、とにかく好きなものは何でも、と言って微笑む。

 彼のそういう子供っぽいところを、私はとても愛している。


 引き出しに入らない大きさのものは? と聞くと、一番綺麗なところを切り取って入れるよ、と言う。

 たとえばこれとか。

 そう言うと彼は手を伸ばし、庭のキンモクセイを一枝、大きな鋏でばちんと切り取る。

 そして引き出しを開け、嬉しそうにその一枝を収める。


 彼は時々、私をまじまじと見つめる。

 君のことが大好きだよ、と囁く。

 特に手が好きだよ。小さくて白くて滑々して、ビスクドールの手みたいに綺麗で可愛いね。

 そう言って、彼は私の手を物欲しそうに眺める。


 そんなとき私はいつも、彼の鋏がばちんと鳴る音を聞くような気がする。

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尾八原ジュージ @zi-yon

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