10.エピローグ
これで、私のつたないお話は、終わりでございます。
アンリ様の戴冠式を知る人も、今となっては、すくなくなりました。私も、この想い出は死ぬまで誰にも話さず、胸にしまっておこうと決めていたのですよ。どういう心境の変化でしょう。
病をえて、この世の生もあとわずかだと悟ったこともありますが、やはり、先日の戴冠式に居合わせたのが、一番のきっかけかもしれません。「悦ばしき入城」で陛下を迎えた少女に自分を重ねてしまったのでしょう。
いえいえ、私のほうが、ずっと美しかったのは間違いありませんよ。当時のことを知る人がいたら、ぜひ尋ねてみてください。
さて、さすがに話し疲れました。
この地上では、誰一人、私を受けいれてくれる人は現われませんでしたが、最近では、そう遠くない日のこととして、夢見ることがあるのです。
私が神に召されるとき、天国の門の前で、私のアンリ様と、私たちの息子が、きっと私を迎えてくれるだろうと――。
悦ばしき入城 maru @maru_kkym
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