咲かない想い、いつか アナタへ

物語は「私」という一人称で始まっていく。

「私は」クラスメイトの柳沢君の事が好きだ。おっとりマイペースな彼はクラスの人気者。特に女子の間では・・・
「私は」は彼には釣り合わない。似合わない。そして思いは決して届かない。
自分自身を否定しながら、彼との関わりに一喜一憂する「私」だった・・・

どこにでも有る、ありふれた日常の高校生活・・・

しかし、物語は後半で一変する。
実は、「私」は・・・・・・

トランスジェンダーである「私」の思いは彼には伝わらない。伝えれない。伝えても叶わない。それを見守る幼馴染の「葵」。彼女は全て理解している。それでいて葵の応援する姿がとてもいじらしく感じてしまう。葵も「私」に想いを寄せているのだ。葵の想いも、又「私」=咲人には伝えれないのだ
「さくちー」「葵」と呼び合う二人、この二人の想いもそれぞれに交じる事は無いだろう。

2回読み返すと、納得してしまう仕掛け。作中の短歌と、作者の表現する人を思う気持ちが苦しくて、切なくて、いじらしく表現されていて、ガンバレさくちー!ガンバレ葵!といって応援したくなる・そんな気持ちになりました。


ひこばえに、想いを載せて 君紡ぐ 咲かない想い 君に届けと
(読後、思わずこのような句を詠んでしまいました。)



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