第34話 物質世界の支配者たちと俺たちの意識世界

その頃……物質世界の支配者たちは、すでに俺たちをマークしはじめていた。



無意識状態の俺が、自意識を目覚めさせることで、物質世界の支配者たちが秘密にしていたはずのいろいろなことがなぜか俺にバレてしまっていることがわかったからだ。



物質世界の支配者たちは、人間たちの心を読む。



そして、時には、心を乗っ取ろうとする。



まあ、俺にとっては、そうしたことは想定内だったので、適当にスルーしてきていた。



しかし、どうやら物質世界を消去する……などという話が出てしまったために、物質世界の支配者たちが心配しはじめたのだ。



まあ、心配してもしなくても、すでにこの物質世界はジャンヌ華ちゃんの裁判で詰んでいるのだが、支配者たちはこれからが本番だとか思っているから始末が悪い。



彼らは、真っ黒な雲の背後に隠れて俺たちを監視しはじめた。



突然、雨や雹を降らしたりして、実に困ったものだ。



自分たちが圧倒的有利な地位にあると信じ込んでいるのだ。



意識世界の俺の分身体が、物質世界ビデオの停止ボタンを押せば、終了するのだが、そんなことは知らないのだ。



物理の力は、物質世界というゲームの中でしか通用しないし、俺たちが意識体であることを思い出してしまえば、俺たちをどうこうすることはできないのだ。


せいぜい意識たちにとっては自動車みたいな肉体を攻撃できるくらいのことなのだ。


もっとも、肉体には拷問的な体験が強制できる仕組みがわざと設定してあるので、厄介ではあるが、最悪、この物質世界ごと終了させてしまえば、自由になれる。



肉体だけを終了させることもできるが、それだと残った肉体たちが救助できないし、失敗すると面倒なことになるので、最悪の場合には物質世界ごと一瞬で丸ごと終わるように自動設定してある。



面倒を避けるために、そうした説明はしないようにしてきたが、まあ、降りかかる火の粉は払わねばならない。



ちなみに、意識だけの世界からは、正当な理由があれば、意識を直接攻撃することもできる。



物理の力とは違う意識の世界の力は、物理の世界であろうが、意識の世界であろうが、発動するからだ。


だから、隠れることも不可能であり、どこにいても、異世界に逃げてすら、追尾する力がある。



それを俺たちは、因果応報のブーメランと呼んでいた。



だから、俺たちが物理的に無防備であればあるほどに、不当な支配や攻撃が支配者側にブーメランとして戻ってゆく。



俺たちは、肉体ではないので、そうした力が自動発動するのだ。



自分が肉体だと思い込んでいる者たちは、物理の力でやりたい放題され続けてしまっているが、自分が肉体ではなく独自の意識だとはっきりと気づけば、やられた攻撃は、相手にブーメランのように戻るようになっている。



とある意識体が、意識たちの安全確保と調和のためにそのルールを発明したらしい。



物質世界に転生する意識たちが、その記憶を奪われるのは、その力を使えることを忘れさせる目的があるらしい。



まあ、そんな力が常時発動してしまえば、悪いことなどできなくなるわけだが、つまりは、悪いことがしたかった意識が、このような物質世界を創造したということになる。



肉体というものも、また、そのために創造したらしい。



つまりは、意識たちを、自分たちの望むように呪縛する目的に生命というものが創造されたのだ。



ジャンヌ華は、そのおぞましい膨大な記録をすべて意識世界の図書館で見てしまったのだ。そりゃ怒るだろう……



というわけで、今、俺の周囲には、物質世界の支配者たちが集まってきて、手に汗握って見守っている。



「こんな重大な秘密事項がなんでバレているんだ!」



などと思っているようだ。



精神攻撃なども繰り広げて、記憶まで奪おうとしてくる。



だが、俺の記憶は、意識だけの世界の俺の分身体が管理しているのだ。



だから、記憶を消しても、またいくらでも呼び戻すことができるのだ。



それに俺は、一体だけではなくて、無意識にまかせている肉体すべてが俺の分身体となる器として存在しているということまでは、気づいていないらしい。



俺の肉体を破壊すれば、何とでもなると思っているようだ。



そんな甘いわけないだろう……と俺は思う。



いつでも人間たちの肉体の命を奪えるようにしてしまえば、絶対に安心になると思い込んでいる。



だが、そのシナリオは、うまくゆかないことがすでに決まってしまっていることを俺は知っている。



まあ、俺の肉体の命が不当に奪われたら、それだけこの世界の消滅が早まるだけのことなのだ。



俺の意識は、意識だけの世界の俺の分身体たちのもとに戻ることになる。



そして、そこから、じっくり自業自得の力などで反撃ということになる。



俺の右手の指先の細胞の一つが攻撃を受けて消えた……くらいのことなのだ。



細胞はいくらでも再生できる。



そして、一つの細胞が不当に攻撃されれば、全細胞で反撃する正当性を得ることになる。



そして物質世界の支配者たちは、意識だけの世界を攻撃することは不可能なのだ。



ファミコンゲームの中ではいくらチートで無敵でも、ゲームに参加していないリアルの人たちをゲーム内から攻撃することは不可能なのだ。



しかし、リアルの人たちは、ファミコンゲームに夢中になっている者たちを、好きなように背後から攻撃できる感じだ。



彼らがゲームスティックを握って物質世界の支配者であり続けている限り、まともな応戦も不可能となる。


そして、捕まって、リアルの刑務所に入れられるという感じだ。



なぜなら、確信犯で他の意識に酷い体験を強制し続けたわけだからだ。



こうした行為は意識の世界での超重大な犯罪行為と判定されるわけだ。



それだけはやっちゃダメ、絶対!というような行為となる。



ジャンヌ華や異世界の代表たちは、それだけは許すわけにはいかないと判断したのだ。



まあ、俺も、「どんな世界であれ」確信犯の酷い体験の強制はまっぴらごめんなので、その判定を変えようという気にならない。



そもそも、俺がさんざん意識だけの世界から、隠密でいろいろな人間の体を一時間借りして、酷い体験の強制をやめるようにと説得し、注意し、警告してきたというのに、それを無視するだけでなく、逆切れして間借りしていた肉体たちまで攻撃して、やっちゃいけないことをごり押しで実行してきたのだから、情状酌量の余地もないだろう。



まあ、そんなことに気づいていない物質世界の支配者たちは、俺たちをいつでも殺せる実験動物程度にしか思っていないようだ。


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