第33話 俺は二郎を探す
俺は、今、太郎を連れて、南米に来ている。
どうやら二郎は、南米のめずらしい食べ物を求めて、旅をしているという情報を得たのだ。
屋台が並ぶ道を、二郎を探して歩く。
太郎も屋台の食べ物に興味津々だ。
年齢は、俺の方がはるかに若いのだが、ガキを連れて歩いているような気分になる。
変な生物などが屋台にならんでいると、そのたびに、立ち止まってしげしげと眺めて足止めをくらう。
おいおい、なんのためにやってきたのか、忘れないでもらいたいものだ。
ちなみに、旅費は、俺が裏技を使って捻出してやった。
意識だけの世界の俺の分身体たち……と連携すれば、いろいろな裏技が使えるのだ。
俺は合法的に、大金を得ることに成功していた。
何せ、未来が全て確実にわかるのだから、ちょろいものだ。
意識だけの世界には、この物質世界の未来もすべて既に存在しているのだ。
まあ、大きすぎるアクションにならなければ、ほとんど俺たちの行動は未来に影響を与えない。
ふと、道端を見ると、物売りに囲まれた旅人を発見した。
意識世界からの通信では、それが二郎だという。
俺は、スタスタと歩いて行って、その旅人に声をかける。
「ハロー」
旅人は振り向いて、俺の顔を見る。
いた……二郎みっけ~
小太りの二郎は、俺の顔を見て怪訝な顔をしている。
僕の邪魔しないでほしいな……という感じだ。
「え? 僕に何か御用ですか?」
などと言ってくる。
俺は、
「はい、御用なんです」
と答える。
「ちょっと忙しいんですけど……」
などと逃げ出そうとしたので、すかさず、
「いや、とても珍しい屋台を見つけたんで、一緒にどうかなと思ったんですが、奢りますよ」
などと言うと、パクンと言う感じで食いついてきた。
「え? どこですか?その屋台って……」
こうして俺と太郎と二郎は、すでに見つけていたフルーツアイスの屋台に向かうことになった。
デコレーションが派手派手なミックスフルーツアイスを、三人前注文する。
二郎は、そこに大阪太郎の姿があるのを見つけて、驚愕している。
「なんで太郎君がこんなところにいるんだい?」
太郎は、
「久しぶりやな、まあ、いろいろ事情があって、先生と一緒にお前を探しに来たんや」
などといきなり言う。
二郎は、はじめは「?」という反応だったが、俺の話を聞き始めると、太郎と同じようにテレパシー会話の時点で俺を認識した。
潜在意識の俺の記憶は消えていなかったようだ。
「先生! お久方ぶりで、どげんしよったんですか?」
などと思い出してくれてホッとした。
これで説明の手間が省ける。
テレパシーで会話できるようになれば、話が速いのだ。
テレパシーならあまり疲れない。
俺がジャンヌ華のことをテレパシーで伝えると、二郎ははじめは泣き出し、次には、嬉しそうにしはじめた。
また華に会えるということがわかったかららしい。
だが、華に会うためには、肉体から自由にならねばならないということを伝えると、悩ましい態度になる。
太郎が言う。
「あのな、先生、わしには、今、結構たくさんの仲間がおんねん。せやから、俺が肉体から離れてしもうたら、あいつらが露頭に迷うことになんねん。
なんとかあいつらも助けてやれんやろうか。」
そうくると予想はしていたが、太郎は、口は悪いが良い奴だなと再認識する。
二郎は、
「先生、ばってん、僕は世界食べ歩きの旅が終わってから華に会いにゆきたいなと思っとるんやけど、それでもええかな?」
などと言う。
やっぱり食い気が優先するようだ。
だが、そんなことを言っていると、いつまでたってもその食べ歩きの旅が終わらない可能性もある。
俺は、いろいろ考えて、対策を立て始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます