あなたもアハ体験しませんか?

 一目見て、凝ったタイトル群が非常に印象的。しかし、その内容は非常に難解で、全容を把握するのが大変な作品でした。
 それだけに、「もしかして」と気づいたときのアハ体験はなかなかのものです。とはいえ、それでもすべて読み解けたワケではないのですが。

 まず分かるのは、「神さまはいるのか?」という自由研究をしていた「一人称僕の少女」がおり、それが自殺。そして同窓会の少し後に、彼女をいじめていた主犯格の委員長も自殺。具体的になぜ・どうして・どんないじめがあったかは言及無しで、当の彼女が自殺してしまうシーンでも、そこへ至る思いは今ひとつ不可解です。

「複数の〝僕〟視点の物語」が断片的に登場するのみならず、ほとんどの人物に固有の名前がなく、数が多いため、「今これは誰の、何の話なのか?」という点と、個々の関係や立ち位置を理解するのに難渋致しました。

 一方、同窓会メンバーの一人が「後日談」で飲食店をやっている〝店長〟となり、認知症の母と会話を交わすエピソードがあるのですが、こちらは良い話ですね。
 おそらく、この店長母子と孫のエピソードだけ切り出したら、綺麗にまとまっていたと思います。それ以外の、自殺した過去の同級生が神さまのことを調べていた、というストーリーがどうつながってくるのか、他のエピソードも、何のためにあるのか? と首をひねるばかりでした。

 ピンと来たのは、一度心折れてからキャッチコピーの「すべての"僕"はあなたの中に」を見返した時です。

 これは自殺してしまった僕少女は同級生の皆の中に、認知症の母に忘れられた成人済みの息子は、それでも子供時代を母に記憶されている、というお話ではないでか? 人は死んでも遺された人に覚えられているんだよ、という。

 Twitterにてその解釈で良いというご返答をいただいているので、やったぜ! とガッツポーズしました。

 作者さまが確固たる美学や信念を持って執筆しておられることは伝わっており、その点を私は好ましく思っております。応援してますね!