選択

 そう、実は召使いの女の子は、王女様の遺伝子から作り出されたクローンだったのです。それは、王妃様を救えなかったことを悔やんだ王様が、王女様に万一があったときのために秘密裏に用意した肉体の予備であり、出自を明らかにせずに召使いとして育てられてきたのでした。

 つまり、王女様と完全に同一の体組織を持っているため移植による拒否反応も起きず、幸いにも互いに違う臓器が感染しているため、今すぐならば確実に助けることができるのです。ただし、二人のうちのどちらか片方のみですが。


 そのため、王様は二つのことについてとても悩んでいるのでした。一つ目は、作製したものの効果の保証がない特効薬に賭けてどちらも救える可能性を選ぶか、手術で片方のみを確実に助けるかという選択です。

 これについては、王様はとてもとても悩んだ末に、手術することを選びました。もし試作段階の特効薬が効かなかった場合は、大切な二人のどちらをも失うことになり、それはとても耐えられないと考えたからです。


 そうして危篤状態の二人を手術台に並べた王様は、メスを手にして目を閉じます。もう一つの選択である、どちらを助けるかについて思い悩んでいるのでした。

 ここで、本来の女の子の役目を考えるのであれば、王女様の方を助けるべきではあります。でも王様は、本当の娘のように慕ってくれる女の子と共に暮らすうちに、例えクローンであっても紛れもなく同じ人間であると強く実感してしまっていました。それで自分がどれほど残酷なことをしてしまったのかに気付いてしまい、女の子に対して激しい罪の意識をずっと抱いていたのです。

 そのため王様は、身勝手な自分の都合で作り出されてしまった女の子の方こそが、本当に助かるべきなのではないかとも考えました。また同時に、こうして王女様を救うためだけに生んでしまったからには、せめてその使命を果たしてもらい、その罪を一生背負って生きていくことこそが、本当の贖罪なのではないかとも考えました。


 そうして王様は大いに悩んだ末に決断し、無事に手術を成功させました。


 それからしばらくして、国は元の賑わいを取り戻しました。特効薬が無事に効果を発揮し、感染した人たちを完治させたのです。


 今、王様はとある墓標の前に立ち、その手には手術の日に作製した特効薬・・・・・・・・・・・・が握られています。そして、王様はそれをゆっくりと墓標にかけると、人知れず涙を流したのでした。


 おしまい。





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 こんにちは、作者の餅餅餅です。まずは拙作をお読みいただきましたこと、心より御礼申し上げます。

 さて、「命の選択」はいかがでしたか。作中で王様の選択は明示されませんでしたが、皆様の中では何かしらの答えが見つかりましたでしょうか。長い人生の中では、こういった重要な選択を迫られる場面もあるかと思います。本作が皆様の「選択」の一助となれれば、誠に幸いでございます。


 この短編は、現在連載中の「ハッピースパイラル~幸せを紡ぐ旅~」の作中作でございます。こういったシリアスな展開も含んだラブコメとなりますので、もし興味が湧きましたら是非お越しくださいませ~。

https://kakuyomu.jp/works/16816452220140659092

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命の選択 餅餅餅 @mochimochinomochiR

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