小手指原の戦い、久米川の戦い、そしてこの分倍河原の戦い。
武蔵野におけるこの連戦に勝利し、新田義貞は鎌倉幕府の本拠地、鎌倉への道を切り開き、幕府を滅亡させるという歴史の大きな流れを作ります。
これだけの偉業を成し遂げたにもかかわらず、今一つ同時代の武将と比べて人物の見えない新田義貞を、作者様は戦の点から描き出しています。
新時代の戦いを具現化し、軍の勢いをつけるため自ら先頭に立ち突撃し、退陣時には殿を務める、勇猛な男であると。
この3連戦は常に新田勢が不利な状況下で戦われましたが、こういった性格の男でないと勝ちを手にすることができなかったであろうと、強い説得力を持って読む私たちに迫ってきます。
3部作どの作品も歴史小説の花である合戦場面を中心に描かれていますので、いきなり核心部分をズバッと堪能いただきたく存じます。