要素3. エリスと主人公のキャラ相性

 アニメでいうと5~6話が一番面白かった。

 その理由を考えると、登場人物間に大きな緊張状態が生まれるからではないかと思う。

 主人公のような考え方とエリスがぶつかった時、自然に5話冒頭のようなコンフリクトが生じる。作り物感が全くない。

 勝手な想像で恐れ多いが、おそらく作者がこの2つのキャラを近くに置いた時、キャラが自然にそのように動き出したのではないかと思う。


 反対に、シルフィと主人公の関係はやや不自然で予定調和的に映った。

 いじめられていたところを助けたところまではいいが、そこから先、二人が仲良くなっていくような必然性が見えない。性格的相性からしても、シルフィは根が引っ込み思案。主人公もそこまで積極的に行くタイプではない。

 性格の相性が良くなくても幼馴染とはそういうものであって、ずっと一緒にいたらある程度の関係が自然に構築されるというのはわかる。しかし、関係構築が自然であれば良いというものでもない。


 もっと具体的にいうと、消極的な性格同士のキャラでは、喧嘩などの衝突が起きにくいので退屈。

 一方で、パウロやエリスのような積極的・攻撃的性格のキャラとは口論や喧嘩などの衝突が自然に生じやすい。この衝突こそが読者が見たいものであり、物語に緊張感を生んでくれる。

 5~6話が一番面白いのは、その緊張感が急速に解消されてゆくからだ。5話冒頭の衝突により大きな緊張状態にある二人は、その後一緒に命の危機を乗り切ったり、街での楽しい買い物体験することで、次第に打ち解けていく変化が見られる。


 主人公がボクっ子の子供キャラなのもかなり効果的。

 エリスからすれば、ただでさえプライドが高いのに「子供の癖に」という要素が加わるので、素直に譲れないという気持ちを増強できる。

 


 前提である世界設定が乱暴に作られているとその上に乗っかるストーリーも陳腐に見えてしまう。それと同じように、人物の相性が根本的に良くないのに無理やりプロット上の都合で繋げようとしても不自然に見えてしまう。

 エリスと主人公のキャラ相性は抜群に良く、その基礎部分がしっかり出来ているからこそ、その上で展開される会話やストーリーの面白さが安定するのではないかと思う。

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『無職転生』の作品分析 かがみん☆かがみん☆ @kagamin2525

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