アフターストーリー 新生活へ向けて


 魔神との戦いを終わった。

 芽吹琴葉の家族になりたいと言う要望を叶えて、妹にしてあげた加納豊は、新しい生活のために準備をはじめていた。

 

「新しい生活なんて加納さんのマッサージがあればなんとでもなりますよね」

「もうマッサージ師として稼ぐつもりはありません」

「そうなんですか」

「マッサージ師は時に誰かを傷つけますから」

「(むしろ傷つけてしかこなかったような……)」

「なにより、マッサージから逃げるために、わざわざこの世界に来たんですよ」

「それじゃあ、これどうしましょうか」


 芽吹琴葉はエージェントGからもらった”新生活準備金”が入った袋を掲げる。


「牧場を経営します」

「唐突ですね、加納さん。でも、牧場つくるためには流石に少し予算が」

「いい考えがあります」


 2人は辺境のさびれた村へとやってきた。

 

「流石は加納さん。パワーだけでなく、インテリジェンスにも長けているとは。それでいったいどんな策で、この少ない資金から牧場をつくろうと」

「これを見てください」


 加納豊はさびれた村の、さびれた牧場を手で示す。

 納屋や柵がかつてそこにあたっと思われる名残がある。

 しかし、修繕するにはどれもこれも壊れすぎてしまっている。


「加納さん、これでは建て替えたほうがコスパがいいような……」

「そこで策の出番です」

「インテリジェンスの出番ですね!」

「『時間按摩タイム・リラクゼーション』」

 

 加納豊は腕を大きくふりあげて、思い切り大地を殴りつけた。

 経年劣化により、朽ちていた納屋が──否、牧場全体の時間が巻き戻って再生していく。


 芽吹琴葉は白い目をして「やっぱり、パワーでしたか……」と疲れたようにつぶやいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【完結】 俺だけレベルアップが止まらない ファンタスティック小説家 @ytki0920

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ