その目にはっきりと見た天使の姿

 特別な才能を持った絵描きの家に生まれながら、写真技術の台頭により職と生きるよすがを失った男が、天使と出会う物語。

 シリアスな雰囲気のハイファンタジーです。タグにもあるとおり「人外」「異能」が登場しますが、決して戦いの物語ではない作品。
 この異能というのも、主人公の家系に伝わる「見たままを写実的に描くことができる」という力のことを指しており、確かに超常的ではあるものの(技術や技能ではなく遺伝的な能力であるため)、いわゆる「異能バトル」的な作品のそれとは趣が異なります。
 つまりは人の生き方や生き様の物語であり、人間ドラマ的な部分が魅力のお話です。

 主要なモチーフでありまたテーマである、「目に見えるもの」の扱い方が綺麗で素敵でした。
 彼にとっての生きるよすがである、目に見たままを写実的に描くことができる能力。写真との違いというか、その特色であったり長所短所あったりが、綺麗に物語の筋に組み込まれているのが読んでいて心地よかったです。
 落ち着いていながらも壮絶な、人間のドラマが魅力の作品でした。