あんた誰?
滝田タイシン
あんた誰?
えっ? 怖い話をしろって? やめてくれよ。こうやって高速道路に乗って心霊スポットに行こうって言うのに、今から怖い思いしないくて良いだろ。
雰囲気出す為って、もう俺の中じゃ心霊スポットに向かってるだけで、十分に怖いんだよ。
怖がりだって? そうだよ、俺は怖がりだよ。だからこそ、怖い話なんてしたくないし、心霊スポットなんて行きたくないんだよ。
ったく、無理矢理行こうって駄々こねた上に怖い話かよ。分かったよ。後悔しても知らんからな。
実は最近やっとドライブレコーダーを買ったんだよ。そう、そのバックミラーの横にあるやつ。今凄いんだよな。安いやつでも、カメラが三つとモニターまで付いてるの。
えっ? 今は怖い話が聞きたいんで、ドラレコの自慢はいいって? いや、物事には順番があるだろ? ここからじゃなきゃ話せないんだよ。
ちっ、話の腰を折りやがって。どこまで話したか? ああ、カメラが三つとモニターまで付いているってとこだな。
で、このドラレコのモニターだけど、バックミラー見るついでに目に入るんだよな。ほら、今はメインが前方で右端に小さく後方が映っているだろ?
そう、停車した時に、何気なしにバックミラーとそのモニターを見たんだよ。
で、ふと気づいたんだが、そのモニターに後ろの車が映っていて、その助手席に白い服着た女の人が映っていたんだよ。白い服というか着物に近いな。でも、よく見れば、バックミラーに映るその車の助手席には誰も居ないんだ。
変だろ? 車も運転手も同じなのに、モニターには助手席に女が座っていて、バックミラーには居ない。
あれ? って思ったんで、よく見ようと思ったら信号が変わってさ。車発進させたら後ろの車は右折しちゃって離れてしまったんだよ。
その程度じゃ大して怖くないって? まあ、そうだろうな。でもまだ続きがあるんだ。
俺も気になったからさ、録画しているカードを取りだして、家のパソコンで再生してみたんだよ。
そしたらさ、やっぱり映ってたんだよ。白い着物の女の人が。
しかも、車のモニターで見た時は普通に座ってただけなのに、パソコンで再生したら笑っているんだよ。俺を指さして嬉しそうにさ。
思わず画面消しちゃったよね……。
えっ? 怖かったって? お前にしては上出来だって? 普段俺をどんな目で見ているんだよ。
しかしさ、俺もこれで話が終われば、良いネタになったって笑えるんだけどさ。
ほら、そのモニターの下に三角のボタンあるだろ? それ押してみて。
このドラレコ三台のカメラがあるって言ったじゃん。もう一台は自分の車の中が映るんだよ……。
えっ? この女誰って言われても知らねえよ。ホントあんた誰? って感じだよな。お前の膝の上に座って、嬉しそうに笑って俺の方を見ている女な。
あれ以来、ずっと俺の車の助手席に座ってるんだよ。
えっ? 降ろしてくれって? 無理だよ、ここ高速道路だもん。
了
あんた誰? 滝田タイシン @seiginomikata
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます