最終章 少女と少女

「男の人が来ていませんか?」

 最近は来客が多いな、と少女は思った。

来訪者は活発そうな見た目の、それでもってどことなく田舎臭い少女だ。

「来てないっすよ」

 顧客の情報は守る義務がある。

「そう……ですか」

「何かあったんですか?」

「いえ、幼馴染が家に戻っていなくて」

「それは辛いっすね。警察へは?」

「もう届けましたけど、高校生だし家出だろうということで取り合ってくれないんです」

「なるほどっす。それでどうしてうちに?」

「少し前、片方の幼馴染、詩島理人って言うんですけど、彼にここを教えたことがあって」

「……片方ってどういうことすか?」

 少女は今にも泣き崩れそうな顔で、幼馴染が二人とも行方不明になったことを告げた。

「そうですか……で、その人を探す異能を買い取ろうと?」

「あ、いえ。わたしは異能が苦手なので、そうじゃなくて単純に何か知らないかなと」

「そうっすか……」

 二人の間に沈黙が流れた。来訪者の少女が気まずそうに笑って、頭を下げた。

「二人がわたしに何も言わずいなくなるとも思えなくて」

「……どうして、根拠もないのにそう言えるんすか?」

「マギルが……幼馴染が、わたしに言ったんです」


「わたしとリヒトがくっつくよう、発破かけておくから、告白されるのを楽しみに待ってろって。そんな言葉を残しておいて、勝手にいなくなるようなバカじゃないんです」


 あ、わたし、間宮翔子って言います。そう言いながら、彼女は去っていった。

「ばか」

 後に残された少女は、赤いフードを被り直して、小さく呟いた。

「ほんと、ばかっすよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異能売りの少女 姫路 りしゅう @uselesstimegs

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ