化け猫ばあちゃん

おみ

化け猫ばあちゃん

 ひどい夢を見た。


 寒い…「寒いよ~」と鳴いても誰も来てくれない。おばあちゃんどこ?「お腹空いたよ~」おばあちゃん…これは夢だ。夢だ。


 起きなきゃ…起きて!!はっと目が覚めた。

 良かった夢だった。でもおばあちゃんがいない。どこだろう探しに行こう、たっぷり寝たから元気!

 あれ?いつもより体が軽い。どんどん進める高い塀もひょ~いだ。これならおばあちゃんすぐ見つかるかも。

 …おばあちゃん見つからなかった。一晩探したらクタクタだ。家に帰ってもやっぱり居なかった。これ夢なのかな?早く起きないと…



 起きたら夜の縁側だった、寒い。夜なのにおばあちゃん布団にもいない。

 そうだ!今夜は狩りをしよう。お土産を持って帰るとおばあちゃんは「すごいねぇ」と言ってくれるからなでなでしてもらおう。蝉がいいかな、あれはブルブルしていてかわいい。そんなに素早くないから簡単に捕まる。見つかるといいな~。

 今日も体は軽くて高い木もひとっ飛びだ。夜のお外はいつもより明るく見えた。


 でもその夜の蝉はみんな小さくてちょっと触ると粉々に砕けてしまった。

 お土産も持って帰れず家に帰っても家の中はしんとしていた。

 クタクタに疲れて気づいたら薄暗かった。あれ?どっちが夢なのかな、なんかわからない。おばあちゃんどこ?

 なんか毛が逆立ってしっぽがムズムズする。手足が熱くて肉球が破裂しそう。「しゃーしゃー」誰かの荒い息遣いが聞こえる。僕しかいないのに、こわいよおばあちゃん…。


 怖い夢をいっぱい見たんだ。体が痛い、また寝てたのかな。



 …玄関から音がする。

「おばあちゃん!おばあちゃん!!」ダッシュで玄関に向かう。おばあちゃんがいた!!足元に駆け寄るつもりだったのに大ジャンプで胸元にひっついた、爪が出ちゃう。

「ただいま。心配かけてごめんねぇ。寂しかった?」おばあちゃんがじっと見つめてる。いつもゴロゴロ鳴る喉が「ぐごぉぐごぉ」いってる。なんだろうこの音。


「…あら。ずいぶん変化してるねぇ、しっぽが二つに分かれてる。ここに力を入れて心を落ち着けなさい」おばあちゃんはお尻をぽんぽんとさすってくれた。そうしたら爪がひっこんでいつものゴロゴロした音が聞こえてきた、気持ちいい。

「あんたはまだ若いから化けるのはちっとばかし早すぎる。私はまだまだ大丈夫だよ。でもしばらく安静だから縁側でゆっくりしよう。あんたがおばあちゃん猫になるまでにはゆっくり教えてあげるからねぇ」



 おばあちゃんいた!!なでなでしてくれた。夢覚めて良かった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

化け猫ばあちゃん おみ @tanabotanabata

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画