自殺屋は自殺者と共にあり、されど寄り添ったり、寄り添わなかったりする

 平成から「令和」に入らず「久化」に続いた日本。
 高度に発達した人工知能が国民を養い、勤労が義務ではなくなった世の中でも、時に不合理な理由で生身の人が担うべき仕事がある。
 国民の『死ぬ権利』を保障するための国営施設、心因性終末ケアセンター。通称「自殺屋」もその一つだ。
 主人公「僕」は自殺屋の新人として、アフロの先輩「宇津木朔日」と三交代制の一つの班を担当し、利用者の利用申請から自殺までの三日間を見届ける。

 管理された理想社会、すなわちディストピア。
 そこに生きる一公務員の視点から見る、そこで死のうと思い立った人と、その周囲の人々。
 ブラックなユーモアを交えて淡々と、それでいて心情豊かに綴る。
 作品の様々な要素を通して、物事の二面性、表裏の不確かさを感じさせる近未来SF中編。
 あとロボがかわいい。