自殺屋宇津木朔日は嘘を吐く
ポチ吉
自殺屋
僕が自殺屋と言う職業を選んだことにさしたる意味はないが、自殺屋になるきっかけと言うならば、両親の考え方が少し古かったせいだろう。
平成の時代に大きく発展をしてみせた人工知能は、
最低ランクで、光熱費込み1Kのアパート(風呂トイレ別)、ドローンで配送される健康的な食事、そして少しのお小遣い。これらがベーシックインカムとして支給される。
つまり最低限の衣食住は賄えるご時世なのだ。
子供のためー、よりよい生活のためー、夢のためー、そう言ったモノを求める人は働き――いや、機械に働く場所を空けて貰って賃金を得る。そう言う時代だ。
だが、僕はそれらに共感は出来ない。今の生活で満足だし、夢を追う位ならば怠惰を選ぶ。そして子供を育てる予定はない。
そうなってくると僕にとっては労働とは『する必要が無いもの』になってくるのだが……如何せん、両親の考え方が古かった。
『人間は働かなければならない』
よくよく掘り下げて聞けば理論的な思考からではなく、ただ、ただ感情から出て来ただけの浅いこの主張。ベーシックインカムに支えて貰い、昼の時間を捻出したデモ隊が道を塞いで叫んでいるこの頭の悪い主張を真顔で言う様な両親だったのだ。
そんな訳で僕は働くことになった。
働けると言うことは、僕は既に成人の身だ。無視して一人で暮らし、六畳一間で宅配ドローンが運んでくる弁当を食べて排泄するだけの仕事に就いても良かったのだが――
孫が抱きたいと言っていた両親に対し、既に超特大の親不孝を行って居ると言う負い目がある身だ。これ以上、親を悲しませるのもどうかと思ってしまったのが敗因だった。
さて。
そこで自殺屋の話に戻る。
ご存知の通り、自殺屋とは正式な名前ではない。
人工知能が人を超え、仕事を肩代わりしてくれる様になった結果、我が国の国民に追加された『贖罪の義務』と『死ぬ権利』。この二つの内の『死ぬ権利』を行使する為の施設、心因性終末ケアセンターのことだ。
国により管理された公務員だが、この職業は異様に人気が無い。
つまりは倍率が低い。
つまりは僕でもなれる。
そんな悲しい理由だ。
毎日の様に死体を見る。それに耐え切れないのか離職率も高いのだが、幸か不幸か僕はその辺りがあまり気に成らない種類の人間だった。死体にそこまで思い入れを持つことが出来ない。僕にとっては見知らぬ人の死体はスーパーに並ぶ魚と同じ様なものだった。
実の所、人工知能へやらせることが出来るにも関わらず、人がやっているのは『最後に触れ合うのが心を持った人間であるべき』と、言う意見があったからだそうだが、その癖、心が鈍くないと務まらないのが自殺屋だ。中々に因果なモノだと思う。
あとがき
ぷちぷちと新連載
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