アルファロメオが宇宙を伝う、大渋滞の純文学

 荒唐無稽と評するにはいささか理性的がすぎる文章。計算し尽くされた魅せ方の中で燦然と輝く「アルファロメオの誘惑」。

 なんじゃあそりゃ。

 でも実は「ポンティアック」「アルファロメオ」がなんなのかわからなくてもこの話は成立する。
 ジャムになってしまったスカートを脱ぎ捨てて新しいものに手を伸ばしたとき、脱ぎ捨てたスカートから手が、手が、手が伸びてきた。スカートの中は宇宙で、彼女は新たな宇宙に飛び込む。宇宙の後日は彼女を「嘘つき」にしたが、彼女はポンティアックがなんと言おうと学校へ行くだろう。

 女子高校生のスカートの中に偏在する宇宙は、宇宙ではあるけれど「宇宙の外側」ではない。彼女は「宇宙の外側」へ出て、そして戻ってきた。「自分が嘘つきになった自覚」を携えて。
 豪雨の福岡市の図像を読めなくなってしまっても=学んだことを捨て去ってしまっても、「宇宙の後日」にたどり着いた彼女に敵はなく、最後にはただ無敵の少女がのこる。

 どこにもない、どこにでもある宇宙の話として、自動筆記と言う形を取りながら「純文学」と取っ組み合いの相撲を繰り広げようとする怪作。