天の川に飛び降りて

蒼風

prologue

0.見たい人ほど見えないもんだ。

 そんなの、いるわけない。


 それが一連の話を聞いたとき、織原おりはら真琴まことが抱いた感想だった。


 だって、当たり前でしょ?学校の屋上に幽霊が出て、それはいじめにあって自殺した生徒が未だに怨念を抱えてさまよってるからだ、なんて、今どきB級ホラー映画でもやらないような“設定”なんて、どう考えても誰かが面白半分で作ったに決まってるじゃないか。


 「にしし」と悪戯をたっぷり含んだ笑みを浮かべて考えつき、それはそれは著名な怪談師ばりのおどろおどろしい口調で語ったに違いない。きっとそうだ。


 それがいつの間にかありもしない尾ひれを沢山身につけて、語るに面白い「学校の怪談」みたいになっているだけ。そうに違いない。


 流れでついてきたけど、ぶっちゃけ乗り気じゃなかった。


 夜の校舎に忍び込むだけだって一苦労だし、いるのかは分からないけど、宿直の教師とか、夜間も厳重警戒を敷いている警備員なんかに見つかったら面倒ごとになるのは間違いがないわけで、そんなものはまっぴらごめんだった。


 だから本当は、うわべだけ幽霊を探す“ふり”をして、それっぽい会話をして、「やっぱり噂は噂でしかなかったね」という当たり前すぎる結論に持っていって早く帰りたかった。


 もっとも、別に家が恋しいわけではない。面白くもない肝試しよりは、自室で寝ていた方がよっぽどましだってだけ。


 なのに。


「あの、さ。もう一度聞くけど…………あんたって、幽霊なの?」


「そうよ?さっきからそう言ってるじゃない」


 そんなことあるわけがない。陳腐な物語とともに語られた幽霊が、


 まさか、実在する、なんて。

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天の川に飛び降りて 蒼風 @soufu3414

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