お洒落で哀愁が漂い、物悲しさと等身大の幸せを感じる

感想は「なんて素敵で寂しい話だろう」でした。

主人公の端島は若かりし頃、隆幸という友人とプールバーに通っていました。ビールを賭けてビリヤード勝負を繰り返し、ビールはどの銘柄が至高かなんて軽口を叩き合い……。
まるで映画のワンシーンのようなシチュエーションにお互い酔いしれて、お金はなくとも心は王様。
いつか自宅にビリヤード台を置く、また外車に乗る、囲炉裏を設置する――――過分ともささやかとも言える目標を胸に歳を重ね、若者だった端島も気付けば家庭をもっている。

堅実で幸せな人生を送っているのだと思う反面、気になるのがプールバーで遊んでいた隆幸の行方。結婚すると同時に疎遠になり今は住所不明、仮に会いたいと思ったところでこれではどうしようもありません。
端島は等身大の幸せを手に入れたようですが、でも隆幸が居なくなって胸にぽっかりと穴が開いているのではないでしょうか。

物語の終盤、奥さんが話す言葉と用意された「3本」のビールには震えるものがありました。
またいつか、彼らが再会できる日を願うばかりです。

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