4:四時花
「オレは子持ちになった覚えはないんだが」
「確認をせずに人間をまっぷたつにした罰としては、かなり甘い措置ですよ」
「なーなー、早く食べようぜハンバーグ」
テーブルの前には二人並んでヒナとシジカがこっちを見ている。ハンバーグもちゃんと作ると面倒なんだからなと言う言葉を飲み込んで、オレはガキどものもとまで近づいていく。
「……野菜、入ってませんよね? 僕、ピーマンは苦手で」
細かく刻んだピーマンと人参を混ぜ込んだハンバーグを、二人の目の前に並べてやりながら愚痴を言うと、少し不安げな表情でヒナが喉を鳴らす。
残念だが、ピーマンは入ってるぜ。
「……あ、美味しいです。リコさん、本当に料理が上手なんですね」
意外そうな表情を浮かべて、パクパクとハンバーグを食べ始めたヒナは、最初にあった時とは打って変わって、年相応の少年と言ったような表情を浮かべている。
シジカも、野菜が入っているとは知らずにハンバーグをモリモリと食べている。
「ったく。血も吸えない、女も連れ込めない、最悪だ」
会長は、確認もせずに人間を殺そうとした罰として、オレにヒナを預けることにしたと告げてきた。
外傷では死ねないという異能を持って生まれたこの子供を育てて、しっかり自分がしたことを償えるようにしろということらしい。面倒なことを体よく押しつけられたってわけだ。
シジカも、相変わらず家にいる。こいつは、どこかへ旅だったらしい両親を探すことと、腕の封印を解くための道具を見つけるまでは、ここで暮らすと言って譲らなかった。
なし崩し的に、オレは二人のガキの子守をすることになってしまったというわけだ。
「そういや、お前、本名はジニアなんだろ? そっちで呼んだ方がいいか?」
「嫌だ!」
「なんでだよ」
あまりにも勢いよく首を横に振るから、つい反射的に理由を聞いてしまう。
確かにジニアってザ外国人みたいな名前よりは、シジカって名前の方がこっちに馴染みやすいかもしれないが。
「紫の鱗で、鹿みたいな角があるからシジカ、だろ? リコが付けてくれたから、気に入ってるんだ」
「あと、花の名前でもある」
そう付け加えながら、思わず頬を緩ませていると、隣で大人しくハンバーグを頬張っていたヒナが顔をあげて睨んできた。
「ええ? ズルいです! 僕もリコさんに名前付けて貰いたい!」
ぎゃあぎゃあと言い争いをする二人に挟まれながら、オレはしばらく続くであろう騒がしい日々を想像して遠い目になった。
でも、嫌ではない。いつの間にか、心に空いていたはずの空虚さを意識しないことが増えていた。
「名前のことは後にして、今日は組合に行って色々な手続きをするからな。食べ終わったら出かけるぞ」
「はーい」
嬉しそうに笑っているシジカを見て、少しだけ考えを改めることにした。
素直に死んで終わりにならないオレの力は、本当に不便な機能の一つだと思っていた。でも、素直に死んで終わりにならない力も、たまには役に立つことがあるらしい……と。
不便な能力にうんざりしていたオレが子供を拾う話 小紫-こむらさきー @violetsnake206
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