ぼっちが快適に一人でいられる場所だって、この世界のどこかに必ずある

待望の高校生活が始まって早々、教室での居場所をなくした主人公・行雄くん。
彼は風変わりな教師・七瀬先生と出会い、廃部寸前の文芸部の部長になります。
図書室登校の弥富先輩や、教室では目立たないタイプの優等生・明椿さんも加わり、文芸部ははみ出し気味な彼らの居場所になっていくのですが……

「ぼっち」は、自嘲的にも使われる言葉です。ネガティブ思考の行雄くんのキャラ性を表すのに、これ以上ない語でもあります。
だけど、教室外にでも居場所はあるのだということ。
ネガティブなままでも、前へ進めるということ。
ひとりであっても、誰かと隣り合って歩くことができるということ。
行雄くんがダメな自分を受け入れて、自分の足で歩むまでの道のりが、非常に丁寧に描かれています。

原風景のようによぎる、幼き日の憧れの人『タク兄』との思い出。
迷いながら、傷付きながら選び取った道で見つけた、本当に大事な譲れないもの。
行雄くんの中に募っていく「大切」に、何度も深く共感しました。

物語を貫く「ひとり」の人生というテーマが、行雄くんのこれまでの足取りと今後の明るい未来に収束していく、素晴らしいラストでした。
多くの人に読んでほしい作品です。

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