第59話
あ~朝である。
爽やかに起きた。
元気いっぱいじゃが、少々腹がへった。
しかたなし、散歩がてら食い物を探すか…
出来たらタロイモなんか植わっとればな~無理か。
有るとしても芋も原種なら、毒持ってるだろうな~
あ、どんぐりでも食えるぞ、無毒化は面倒じゃが。
と、こりゃ、草むらではなく、ジャングルに近いのう、とても歩けぬ。
「棄、孫!予の通る道を作るのじゃ」
「へいへい」
二人はやる気なさそうに、船にあったナタらしきもので枝を払いつつ
先行する。
う~ん、行けども行けども、シダやヤシらしきものだらけじゃ。
ココヤシの木はないんか?あれもないのう。
トゲトゲのついたヤシはおっきいのがあるのう。
ヤシといえば、前世で、ちょこっと聞いたが、幹が食えるのがあるとか。
試してみるか、他になんもないし。
「このヤシを伐採し、中身を食えんか確かめてみる」
「一本、川のそばまでもってこい」
「え?ヤシの木が食えるんで?」
「まさか~~」
「まだわからん、試してみるのじゃ」
「はァ~」
というわけで、近くの小川のそばにみんなで引っ張ってきたヤシの木を、前にしておるんじゃが~
「確か~2つに割って、中身をえぐり取って、ぐちゃぐちゃにして、樽の中の水で
よくもみ洗いをして、水に溶かす。で、しかるのちに放置すると、下に沈殿する。
うまく行けば、これが麦のかわりになる…だったかな?」
「ホントですかい?」
「だいたいどこで聞きかじられた知識で?」
「だまされてますぜ、秀頼様」
も~うるさい、うるさい。
「黙れ~い。今まで、秀頼様の英知のおかげで飢えなかったのを忘れたか!」
「さよう、さよう。黙ってとりかかれい!」
「へ~い」
ありがと、棄、孫。
ふたりの一喝により、作業はサクサク進み、大樽の中は濁って真っ白。
みな、期待してじっと見つめること数刻。
「お!、澄んできた。見よ、白き沈殿物が~~」
「やった、ばんざい、バンザイ」」
沈殿物を陰干しして乾燥させた。
一本のヤシから三十貫ぐらい取れたんと違うか?
大量じゃ、これで食えたら…
まず、乾燥させた粉と水で練り、鍋底に薄くはり、焼く。
これは!
膨らんでないパンみたいになったぞ。
後は安全かじゃが…
「棄、孫食うがよい」
二人はすぐ食いついた。
「もぐ、もぐ」「むしゃむしゃ」
「ど、どうじゃ」
「余り味はしませんが、焼き魚でも巻いたらいけるのでは」
「そ、そうか。では予に焼き魚と味噌を持て」
「あ、われにも」「われにも」
みなでガンガン練って、焼き、挟んで食う」
「うまい!」
「うま~」
良かった、虫せんべいは食わんでも良さそうじゃ。
「さすが秀頼様、ありがたし」
「へ、へ~」
良き気分じゃ。腹も膨れた。寝るぞ。
「予は疲れた、昼寝するぞ」
「はは、ささこちらへ」
寝床に行き、寝た。
「すすすすす」
で、予はすることもなく、夜になり、飯を食い、寝た。
**************
翌朝。
「今日も元気じゃ、頑張ろうぞ。修理班、魚釣り班、ヤシ班夫々にがんばれい」
満腹したみんなは元気元気。
ヤシの粉も焼いたり、煮込んだりすれば消化もよい。
タンパク質は魚と貝、なければ虫せんべいでいいか。
虫を集めて、すりつぶし、シダ粉でつなぎとし、焼く。
これが気持ち悪いんだよな~予は食べんぞ。
他に足りんのはビタミンか…
「これい、みな、海草を食うんじゃ、消化悪いから味噌でグタグタに似て味噌汁でのめい」
「味噌がなくなりました~~」
「なにい~それでは塩で煮て」
「ソレもありませ~ん」
一大事じゃ、塩がなくなれば重労働で倒れるぞ、なんとかせねば。
「そうじゃ、海草を集め、炎天下で何度も何度も海水をかけよ。さすれば塩辛い海草の出来上がりじゃ。これを魚などと一緒に煮ればよい」
「な~る、さすがは秀頼様」
「やんや、やんや」
ふむ、とふんぞり返る秀頼であった。
*************
ま、それやこれやで1ヶ月ほど経った。
ヤシの粉のおかげで、我ら、なんとか飢えもせず、修理に励んでおった。
予は大将だで、指示するのみ。
おかげで一貫近く肥えたわ、ほ、ほ、ほ。
そうして曲がりなりにも修理は完了し、ニッポンに帰るんじゃが・・・
どちらに進んだらいいの?誰か教えて。
こういう困ったときは…
「棄、孫を呼べ」
「は」
やってきました二人連れ、予は問う。
「いよいよ修理はなった。いざニッポンに帰るぞ」
「はは~」
「喜ばしいことで」
ふたりとも、喜色満面。
「で、じゃ」
「は!」
「どちらの方向に船出するのじゃ?」
「はあ?」
「そ、それは秀頼様がお決めに…」
「馬鹿者、予は船乗りではない。より彼方の海原へ、深く深く進んでしまったらどうする!」
「どちらに進めば日の本に帰れるかと聞いておるのだ」
「わ、わかりもうさん」
「ならば、さっさとわかりそうなやつを連れてこい!」
「は」
二人は慌てて退出する。
もう、肝心なときに役立たぬ奴ら。ソレぐらい考えとけよ、と予がブツブツ言っておると、
一人の水夫が恐る恐る近づいてきた。
まあ、こいつのほうがマシかと思い、再び予は問う。
「これ、日ノ本へ帰るぞ。船はどちらの方へ向かえば良い?」
「さあ~わし水夫ですが、遭難したことがないで、わかりやせん」
「ま、まことか!」
「へえ、ただ…」
「何でもよい、話すがよい」
「へえ、遭難して帰ったという話を聞いたことがありやすが、その話の中に、南海の島にたどりついたと」
「知ってるのは、そ、ソレぐらいで」
「む、南海とな」
ここがもし南海なれば、その反対、北に行けばよいのではないか?
「う~む、参考になった。褒美をとらす」
試作品の虫せんべいを手元にあった5~6枚を渡す。
「へ?あ、ありがとうございやす」
水夫はせんべいを手に帰っていった。
重畳、重畳。
よし、北に進むぞ。
「皆のもの、集まれ!」
ぞろぞろと集まる二八?人。(
「皆のもの、日ノ本へ帰る方角が決まったぞ」
「お~」
「北じゃ、ひたすら北じゃ」
「さすれは日の本に帰れよう。夢、疑うことなかれ!」
「おお~」
「さすれば取りかかれい!」
そして、我が船は湾をでて、大体、北に向かい出航した。
頼むぞ~~海の神様~~~ニッポンに帰りたいよ~~~
おんぶ大将(~ちょっと改) @ratuki
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