第58話

今日も今日とて海の上じゃ。


な~んもないのう、周りを見渡し、予は思う。


船は応急修理を行ったが、南蛮の帆船をかっぱらって、適当に見様見真似で


運用しておったゆえ、完全な修理は無理じゃ。


帆は一部なくなっておるし、舵もよく効かん。とりあえず、真っすぐには走れそうかな~という状態である。


大体、ここがどこかわからん。ま、黒潮に乗ってる気はする。


魚も取れるし。


で、とりあえず、太平洋の島を発見して、上陸し、体勢を整え直さんことにはのう。


我らおんぶ隊が……


ん? 何人残っておるのだ?赤い安宅との戦闘や、嵐でそこそこ減っておるのではないかな、もともと余り、乗り込んではおらなんだと思うし。


聞いてみるべし。




「これ!誰か有る?棄と孫をここへ呼べ」


「は!」


急ぎ来た二人に尋ねる。


「これ、乗船しておるものはいま何人ぞ」


「結構、生きておるんで、二七人~八人でござろうか」


「さようさよう」


「またいい加減だのう、把握しとらんのか」


「波乱万丈にて忘れておりました」


「う~ん、結構少ないのう」


この人数で、江戸に帰り着いたとて、攻撃できるか、偵察のみじゃのう。


こりゃまいった。




「お、何じゃあれは!」


「怪物じゃ」


「クジラでござるよ」


騒ぐ孫一をあっさり下す棄丸。


「お、なんと!あれが珍味のもとでござったか、はじめて見もうした。大きいのう」


「何を言っとる。あれはまだ小さいほうじゃ。大きいやつなんか、この船を体当たりで


沈めるぞ」


「な?真でござるか、それは恐ろし」


ビビる二人。


ちょっと盛ったかな、ほ、ほ、ほ。


その時、クジラが突然、尾っぽを宙に翻し、海に沈んだ。


「お!潜った、潜った。もう出てこんぞ」


「ふん、あれは動物じゃ、魚ではない。息をしにすぐ出てくるわ」


「なんと、どこじゃ、どこじゃ」


廻りを必死で見回し、クジラを探す二人。


そんなにすぐに出てくるかよ、だが暇つぶしにはちょうどよかろう。


そう思い、二人を笑って見つめておった。


「お!出おった!」


「早いの」


そう言って、指さされたほうを見ると、もっと大きなクジラが姿を出し。


「プシュ~~~~~」


「潮を噴きよった~~~ワハハ、面白し」


二人は手をたたき喜び合う。


予か?ガキだからもちろん、一緒になって手を叩いた喜んどった。


他の者たちも鈴なりになって、喜んでおる。


誰かが言う。


「もう一匹おるぞ、あのクジラの横の方~~」


なになにと見てみれば、あ、あれは…


「し、島じゃ~島が見えるぞ~~」


なんと!予は命ずる。


「皆のもの!仕事じゃ!なんとしてもあの島へいくぞ!」


「働け~~~」


「おう!」




船はよろよろと向きを変え、一路、島へ。




…………***********………






そこに見えてるのになかなか着かない。


ひょっとして、大きい島かのう、どこかの半島ではあるまいな。




…***********…




ようようついたぞ、ここはどこであろう。


「皆のもの、着岸できる場所を探すのじゃ」


「は」


命令一下、そろそろ、ヨロヨロと島?の廻りを廻り始める。


大きいぞ、この島。絶壁の岩岩。はたまた眩しいぐらいきれいな砂浜。


外海とて打ち寄せる波は荒い。ここはだめじゃな。


「秀頼様、ここよりぐっと入り込んでおりまする。湾ではござらんか」


「おう、良さそうじゃ、奥へ舵を取れい!」


ボロボロの船はよろよろと進む。


と、そこにはまるで人の手が入ったかのごとく凪いで静かな場所があった。


「ここじゃ、着岸せよ」


「おう!」


わが船は静かにギリギリまで近づき、錨は降ろされ、船は静かに休む。


「降りるぞ~~久しぶりの陸地じゃ~~」


「秀頼様~どうぞ~」


「うむ」


予も陸地に降りた。嬉しいぞよ。まだフラフラするが。


みな、大地にしゃがみ込み喜んでおるな。




さて、亜熱帯の島であることはわかるが、なんか食うものが有るかな~


「棄、孫、飲水と食うものを探してこい。あ、魚は飽きたぞ」


「は、自信はござらんが」


「右に同じでござる」


「ええいとにかくできそうなものを連れて行ってこい!手ぶらで帰るな」


二人は渋々部下を連れて、夫々の方向に散っていった。


残りのものは、船にあったテントらしきものを広げ、適当に製作した。


足りぬ分は流木を集め、シダにて屋根を作る。




く、くたびれた。皆で、残った最後の乾飯を魚汁で溶き食う。


ああ、空腹は最高のご馳走じゃな~~♪




「た、只今帰りましてござる」


と棄丸。


「せせっしゃも帰りました~」


と孫一。


みな、ヘロヘロである。


「わ、我らの飯は~」


「ご苦労、飯を出してやるがよい」


「す、すみませぬ、空でござる」


「そ、そんな~」


仕方ない、なにか食うものを探してやろう。


「それ、虫を探せ、磯の貝、フジツボ、うに、海草。何でもよいから集めよ」


一刻ぐらいで、なんとか集まったわ。


「食うがよい、火は通せよ」


「ひえ~~」


「し仕方なし。食ったら魚を釣るぞ」


まあ、結構、食っておったぞ、空腹はたまらんからのう。


しかし、次回は予も食うのか、虫は嫌じゃのう。


ご飯かパンに魚やエビなら良いのう。


貝は毒が怖いが…ふたりがなんともなさそうじゃからいいか。


で、二人の話では水はあったが、人は見ず。獣も見ず。鳥は多し。


木は大量にあり、シダや、ヤシ?らしきものは見る。穀物も芋もなし。


人が住んどらんと見えるとのことであった。


う~ん、毎日、虫食か…


すりつぶして、焼いて、せんべいにして食う。


嫌じゃ~~


なんとかせねば。


「夜じゃ」


「寝るぞ」


「は」


「それそれ、秀頼様を中心に……」


声を聞きながら予はコテッと寝た。




******************

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る