最終章 事件の後に残るもの

 「だから、アルタって誰の事?」「やっぱり、理解できないよなー!俺も理解できない部分もあるしな!」と口論していて、担当の医師は入るタイミングを失って二人の前にずっとたたずんでいた。その医者のことをみんなワニ先生と呼ぶ。それもそのはず、顔がワニの獣人だからである。ワニ先生の得意なことは、重症患者の意識回復だ。例により、楠木と黒鉄翔太は、ふたり共々ワニ先生の手によって意識が回復したのだった。そんなこんなで、楠木の病室の前で待機しているワニ先生。楠木とアーツの口論が沈黙ゾーンに入った所でワニ先生が二人の前で一言。

「元気なら問題ないけど、うるさいのは、関心しないね!」と楠木とアーツの言うことは、一つだけだった。「すみません」と続けてワニ先生は、君宛に電話が来てたから電話番号だけ教えとくよ。というと、紙切れを渡してきた。誰だろうか考えるが楠木は、当てはまる人物が居ない。なぜなら、楠木は大体の初対面の人と電話番号を交換するからである。そんな、話をさっさと切り上げてワニ先生は、事務的な話をみっちり10分間もして出ていった。最後にワニ先生は、「君ってもしかして···いやまさかな!」と意味不明な言葉を言いながら出て行った。すぐに、楠木はリハビリのトレーニングを始めた。

一方、黒鉄翔太は一人病室の天井を見ていた。楠木に負けた事実よりも、アルタの生きているという言葉を聞けただけで十分だった。そこに、1人の医者が入ってくる。ワニ先生だった。「まさか、君みたいな人間が病室に寝ているなんてね!もし、僕の患者じゃなかったら画家を呼んで書かせてるかもね」と皮肉げに言う。「何が言いたい?」「要するに、あの少年が殺すではなくて気絶を選んだのは、間違いなく君のためだってことさ。あの少年、君よりも強いよ、圧倒的に!」と言うと話題を変えるように、事務的な話をさっさと済まして出ていく。最後に、「君が行きたい場所は、わかっている。望むなら、その場所に行かしてあげるからそんな顔でいるんじゃないよ。でも、この星で筋は通しなよ」と黒鉄翔太に言うワニ先生は、ふと鏡を見る。そこに映るのは、魂の抜けた顔だけだった。それでも、優しい顔をしていた。

ワニ先生は、言う「あの子たちの道は、自分で切り開かないといけないからね」と。

その頃、楠木は昼間ワニ先生からもらった紙切れの電話番号にかけた。2回コールで出た。「今回、ありがとう。」「って言っても実感がないんだよねー」「とりあえず、黒鉄翔太と私共々色々世話になった。」「一体いつまで引きずるんだ。」あれは、約2年前の話であった。楠木がたまたま通りかかった惑星に1人の少女と出会い。強引にでも、他の自分の手の届く惑星に避難させた。その後、出会った惑星は消滅してしまうのだが、その時に出会ったのがアルタだった。「これから、楠木は、どうするの?」「んにゃ、とりあえず入院ですね」と笑いながらも光が沈む姿を見て何となく笑った。

 「そっちにも近いうちに顔出しに行くよ、黒鉄も一緒に」

 「そっか、分かった。」そんなたわいもない会話が終わったあと不自然な沈黙な時間が流れた。そして、彼は楠木流星は自動販売機に缶コーヒーを買いに行くのであった。それは、思いつきなのかは深く漁ることではない。

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恒星の七星《プレアデス》 @Colnet

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