第19話 その後 エピソード

 その日もグレンは忙しくしていた。


「今日は何人だ? しっかり検査してくれ」


 この世界線に残った『来訪者』は寿命が短い。何か原因があるのではないか、時空を超えた事による身体的な負荷が主な原因の一つだ思われるのだが‥‥‥グレンが来訪者の健康管理システムを立ち上げて来訪者は定期的に検査をする事を義務付けた。


 義務付けをしないと保護申請した者が検査をさせない可能性があるからだ。金持ちの道楽で買われたにせよ、その者がこの世界線に留まる事を決めたのだ。この世界線に残ると希望した者達。その来訪者達に人権とこの世界の人間達と同じように、エイジングケアを行っていた。


 それまで平均寿命が六十歳だった彼等は、エイジングケアにより、長くその命を長らえさせる事が出来る様になっていた。来訪者の多くはハイスペックな力を持つ、その事も短命に関わっているのではないと、その力を押さえる薬も開発された。その努力の結果来訪者と呼ばれる者達の寿命は上がってきている。平均寿命を超えても生存し続ける事が出来ている。しかし、健康管理を怠ってはせっかくのシステムが機能しなくなってしまう。それに、この世界線を自分の世界線だと決めてくれた‥‥‥だから‥‥‥




※     ※     ※




 グレンは静かに眠る男性の傍でその寝顔を見つめていた。


「貴方が作ったこの世界線をとても素敵だと彼は言ってくれた。クローンが治めるこの世界をだ、二度と間違いは起こさせない。戦争は出来ないようにと貴方がそう決めた‥‥‥クローンである俺達はそれが出来ないように思考も操作されている。この世界は平和ですよ‥‥‥」


 不思議だよな‥‥‥偏見や差別を嫌ってこの世界線を作ったはずなのに、それでも差別は生まれるんだ。生活水準だって格差を起こさないように労働の基準を作って皆それなりに仕事を持っている。それでも人は何かしら理由を作って差別をする。


 どうやっても差別を無くす事は出来ないのか‥‥‥。グレンは溜息混じりに呟き、窓の外の青空を見つめる。


(終わり)________________________________



この作品を読んで下さってありがとうございます。皆さんの前にも沢山の違う世界線があります。手を伸ばして見つけて下さい。貴方だけの道を迷ってもいいのです、探して下さい。

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パラレルワールド @sakura37

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