【?報】織姫と牽牛の逢瀬、今年も中止

藤田大腸

ぶっちゃけ世の中大変だし雨降っていようがなかろうが七夕って気分じゃないよね

 今日は七月七日。織姫が牽牛と会うのを許される日です。


 昨年は豪雨で天の川を渡ることはできませんでしたが、今年も大雨が降っているため叶いそうはありません。もう何年連続で渡れなくなっているのかすらわかりません。


 牽牛の我慢はもはや限界に達していました。彼はこの日に備えて過酷なトレーニングを課し、濁流であろうと流されない強靭な力を手に入れました。体は全身筋肉の塊になっていおり、その姿は戸○呂弟を彷彿とさせました。


「ふふふ、待ってろ織姫! 鍛えに鍛えて手に入れた鋼の肉体でお前をヒィヒィ言わせてやるからな!」


 ナニとは言いませんが、溜まりに溜まっていたものを織姫にぶつける気満々でした。


 一方の織姫はというと、天帝の力で女体化したカササギと不倫していました。この一年間で織姫はすっかりカササギの肉体に溺れきってしまいました。今年も大雨なので思う存分カササギと愛欲にまみれるつもりでいましたが、風のうわさで牽牛が強行渡河してくると聞いてしまいました。牽牛への愛は冷めきっていましたが、会いに行ってやらねば疑われてしまいます。


「どうしたものかしらね……」


 織姫はベッドの中でカササギに呟きました。


「心配いりません。実は、牽牛様が天の川を渡ってくることがないよう仕掛けを施してきました」

「仕掛け?」

「ええ。男の人がハマる仕掛けをね」


 仕掛けが発動したのは、牽牛が天の川の岸にたどり着いたときでした。大雨が降っていましたが、天の川の水量は特別警報が出されていた昨年ほどではありません。牽牛は服を脱ぎ捨て、筋骨隆々の肉体を雨中に晒しながら川に足を踏み入れようとしていました。


 そのとき、一匹のめんどりが牽牛の目の前に現れました。


「む? なぜこんなところにめんどりが」


 めんどりは牽牛のところに近寄ると、突然まばゆい光を放ちました。


「うわっ!」


 光の中から現れたのは、赤い髪の美女でした。服は着ておらず、肉感的なボディが顕になっていました。


「だっ、だだっ、誰だ君は!」

「わたしの名前はデネブちゃん! お兄さんが来るのを待ってたよ!」


 言うなり、デネブちゃんと名乗る美女は牽牛を押し倒してしまいました。


「何をするんだ!」

「何って、ナニに決まってるでしょ。お兄さん、奥さんに逢えなくてそーとー溜まってんでしょ? わたしがスッキリさせてあげるっ」

「まっ、待てっ! 妻を裏切るつもりはっ……!」


 しかし悲しいかな、体は正直でした。デネブちゃんの超絶テクニックに牽牛はたちまち轟沈してしまいました。織姫以外の女性を知らなかった牽牛にとっては衝撃であり、しかも数年間我慢させられていたとあって理性のタガは簡単に外れてしまいました。最後の方は牽牛の方から攻め立ててしまうほどでした。


「あはぁ……お兄さんすごかったよぉ……」

「ううっ、すまん……許してくれ妻よ……」


 自分のしたことを知ってもすでに遅すぎました。しばらくして、再び男女の嬌声が岸辺にこだまするのでした。


 そして牽牛が渡ってこないのを知った織姫は、思う存分カササギといちゃつきあいました。


「ふふふっ、これでダブル不倫成立ですね。んっ……上手になりましたね織姫様」

「あなたに鍛えられたもの。それにしてもよくお父さまに上手く頼めたわね。デネブちゃんのこと」

「私はこう見えても天帝様の信頼は厚いのですよ。さすがに娘婿を寝取らせるため、とは言いませんでしたけどね」


 そう、デネブちゃんの正体はカササギのお友達のめんどりだったのです。天帝に上手く取り入って人の形に変えてもらい、牽牛にハニートラップを仕掛けさせたのでした。


「織姫様、今度はデネブちゃんも呼んで三人で楽しみませんか? 女の子もイケるって言ってましたし」

「ああ、これでどんどん人の道から外れていくわね……」

「いいえとは言いませんでしたね? じゃあ私たちだけで夏の大三角形といきましょう」

「ああんっ!」


 攻守入れ替わって、織姫は受けの立場になりました。ここにもう一人やって来たらどんな凄い世界が繰り広げられてしまうのだろうか、と今から心待ちにしているのでした。


 おしまい。


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デネブってめんどりの尾って意味らしいです。

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