第8話 すべきこと
お待たせしました!
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『響くん、ーー』
聞こえない、名前の後……なんて言ってるんだ?
『響くん、ーーね』
肝心なところだけ聞こえない。そもそも……君は誰?
『私のこと忘れちゃったの? ーーだよ』
名前! 君の名前が知りたいんだーー
「はっ」
目を開けると真っ暗な世界。ここは……。
パチっ。
無意識に伸ばした手が明かりをつける。
「あ、俺の部屋か」
自分のベッドで仰向けの状態だった。制服のままで寝ていることに気づき、どうしてこんな状態なのか思い出す。
「はぁ……美亜は大丈夫だろうか」
あの呟きが、DMの淡々とした返事が、頭から離れない。
「とりあえずご飯食べるか」
時計を見れば時刻は夜の21時。思いっきり寝てしまったようだ。
簡単に肉野菜炒めを作って食べる。うん、健康的だよね。ついでに味噌汁も作った。しじみ汁が五臓六腑に染み渡るぅ……。
*お酒は飲んでおりません。
「美亜に会いたいな」
ぽろっと溢れた言葉に自分で驚く。あんな変な子に会いたいと思う自分はだいぶおかしくなってるんじゃないだろうか。いや、そんなことはないはず……だ。うん。
「よし! 美亜に会いに行こう!」
え、なんでお前そうなった? と思ったそこのあなた! 俺は思い立ったらすぐ行動するアクティブ派なのです!
と、なぜか急に説明口調になったけれど、問題はそこじゃない。
「会いに行こうにも住んでる場所知らないんだよなー」
そう、知らないのだ。知るわけない。いや、むしろ知っていたら怖い。
「どうすっかなー」
神奈川県の高校全部を訪ねて回る? いや、現実的じゃなさすぎるよな。
「かと言ってSNSで全力で美亜のことを調べて特定するのもなかなか……ストーカーチックだよな……」
うんうん唸る。ネット友達に会いに行くのがこんなにも難しいなんて思わなかった。いや、考えてみれば難しくて当たり前で、むしろ会いに行く状況がおかしいのかもしれない。
「とりあえずDM送ってみるか……」
こういうのは本人に聞くのが一番早いのかもしれない。
と、スマホを開いたところでたまたまある他人の呟きが目に入る。それは美亜が”いいね”を押していた呟き。
『あさみ高校の文化祭楽しかったー!』
あさみ高校とは、俺が前に住んでいた神奈川のとある街にある高校だ。まぁ、もしかしたら同じような名前の違う高校があるかもしれないが、関東であさみ高校といえばそこしか俺は知らない。
「可能性は低いかもしれないけど行ってみるか……」
”いいね”しただけだからたまたま見ただけの可能性もあるが、美亜が住んでる神奈川であるということがどうも気になる。
「まぁそれだって俺が知ってるあさみ高校であれば、だけど」
苦笑する。こんな偶然あるのだろうか。むしろもし美亜が通っている高校だったら奇跡だろう。
「奇跡、起こしてみせますか!」
俺のことを好きって言ってくれる女の子一人助けられなくて何が男子だ!
俺は自分に気合いを入れると、まず奏季にメッセージを送る。
『俺、明日休むわ』
『急にどうしたの?』
「いや返信早っ」
すぐに返ってきたメッセージに驚きながら曖昧に返す。
『ちょっと、用事が、な』
『サボり?』
『な訳ねぇだろっ!』
『じゃあ、なんで?』
こいつメンヘラかよ……俺のことそんなに好きなのか?
そんなバカなことを考えながら、自分史上最高にかっこよく返してみせた。
『女の子を助けに行ってくるぜ!』
リアルで、右手の人差し指を前に突きつけるようにして決めポーズを決める。と同時に返信が……。
『うん、意味わかんないけどとりあえず頑張れ⭐︎』
急に冷静になる。その瞬間、俺はスマホを投げると、ベッドに倒れこんだ。
「やべぇ恥ずかしく死にそうわあぁぁぁぁぁぁあ!」
俺は足をジタバタさせながら絶叫したのだった。
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読んでくださりありがとうございます! だんだん二章のクライマックスに近づいてきましたね。これからも楽しんで読んでくださると嬉しいです!
【2章開始!】ネットで出会った美少女と実際に会ってみたら何故か好感度MAXだった。彼女が積極的(ポンコツ)すぎてSの性癖に目覚めてしまったので責任取ってもらうことにします。 美原風香 @oto031106
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