極めすぎた落語は人を殺す

この演目から目を離すな。

舞台上の噺家は、一本の扇子だけであらゆるものを表現する。
扇子を箸に見立てゾゾゾと音を立てて啜れば、そこには熱々のかけそばが出現する。啜り方ひとつでつゆは熱を持ち湯気まで見えてくる。観客は息を呑み、うまそうなそばだね、よだれを垂らす。それが裏落語相手には命取りとなるのだ。

そこまでの創造力を持った噺家が、殺意を持っ扇子を振るえば演芸場は灼熱の渦に巻き込まれ、うなりを上げるチェーンソーが行き交う死の土壇場と化す。そんな異能の噺家一門を皆殺すためにアイツがチェーンソーでやってくる。

この演目は残酷だが、それ以上に男と男のむせかえるような強い感情が充満している。

(完結後の追記)
そして、最終話が圧巻でした。
噺から逃げず、圧倒的に大虐殺をしてみせる。未曾有の大傑作です。参りました。