歩けメロス

作者 春海水亭

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★★★ Excellent!!!

くだらないと思いきや、ラストは原作の「私も仲間に入れてくれまいか」という白々しいセリフより、しっかりしている。
他にも、「音速より少し早い」という表現により「じゃ、音速って時速何キロなのよ?」と興味を持ってしまう仕掛けや、「企業WIKI」「パワー特化型」など笑ってしまうが、デジタル社会にスムーズに入っていけるきっかけとなるような言葉が散りばめられている。
令和時代の国語の教科書はこうあるべきなのかもしれない。ギャグがくだらないかどうかは関係ない。もっと大きなもののために、教科書の題材は選ばれるべきだ。

★★★ Excellent!!!

このメロスの速度は、時速1235キロメートルまで達する。
そしてもう一つ、このメロスの速度の土台にあるのは企業WIKIである。

このメロスはセリヌンティウスを救わない。
だがは彼は、たしかに人を救い、王の心をも取り戻す。
これは走る方のメロスのテーマ、あるいはそれ以上のものに落ち着くのだ。

恐るべき荒業。恐るべき構成力。
だがなにより恐ろしいのは『太宰治原作』を名乗るその精神。

このメロスは、走らない。

★★ Very Good!!

と思って感心してたらイモスノオットスで膝から崩れ落ちて皿が砕けました。もう交換用の膝がありません。

真面目な顔ですっとぼけつつ、暴君と激突する熱い展開に加え、村人たちの「歩け」という願いに反して、メロスは歩みを止めることはないという対比が美しく、破滅的な英雄を美しく見せていました。

★★★ Excellent!!!

教科書にも載っている名作『走れメロス』をテーマにした作品はたくさんあるけど、ここまで魔改造した作品は非常に少ない。一個でもあってたまるか。改造の具合が学生ロボコンに倫理を失ったお茶の水博士が出てるレベル。
作中のメロスも大概スピード全振りオバケなんだけど、何よりもスピード感があるのはその文章自体。怪奇展開を読者が咀嚼する時間を待ってくれない。瞬きした瞬間に次の怪奇が目に映る。助けて。
色々言いたいことはあるんだけど、面白いからなんかこう、困るし。もういっか……ってなる。
めちゃくちゃ面白かったです。