第8話
「なにこれ、なにこの方、なにこの状況。
ホラー映画みたいですわーっ」
円花が座り込んでそんな事を言う。
俺は階段を上がろうとする。
階段を振り返って先にはゾンビらしき男。
血まみれでこちらを見てる。
「いやっ、先輩。
どこ行くの」
円花が俺に縋り付く。
「二階だ。
俺の部屋にバットが有る」
相手は血まみれのバケモノ。
本当にゾンビかどうかはともかく。
今にもこちらに襲い掛かって来そうなのだ。
素手で相手をしたくは無い。
一端逃げよう。
戦略的撤退。
「やだやだやだ、立てないですわ」
腰が抜けたらしい、円花が言う。
普段はしっかりしたお嬢様なのだ。
目の前で家政婦の死にざまを見たのでショックを受けているのだろう。
目を見開いて何処を見てるか分からないような顔。
魔法少女だろ、お前。
「円花。
アイツはアレかもしれない。
いつものマモノ」
七鮎川円花はいつも襲われてる。
言葉を話す魔狼、魔犬や魔鳥。
そんなモンスターといつも戦ってるのだ。
「そっそうか、えっ、でも」
円花は半信半疑。
いつものモンスターは大体動物風。
角を生やしたり、牙を伸ばしたり如何にもモンスターという風情。
目の前に居るのは血まみれの配達員の男。
そんな感じがしないのだ。
俺も多分違う類いだと思う。
思いはするが。
「円花、キミは魔法少女だ。
人々を護るため戦うんだ」
俺はテキトーな事を少女に吹き込む。
円花の顔が正気を取り戻す。
キチンと前を見た目。
両手を前に合わせて差し出す。
碧く煌めくブレスレット。
姿が替わる。
高校生の少女から、戦う魔法少女へと。
下着を脱いだ状態で変身したらどうなるのか。
もしかして魔法少女の衣装も下腹部無かったりして。
そんな事を考えながら俺は観察していた。
学問的観察である。
学究心からである。
好奇心こそが学問を育てるのである。
残念ながら魔法少女の衣装はいつも通りだった。
金属アーマーのベルトとそこから伸びた透けて見えるスカート。
中はスクール水着風アンダーウェア。
なにも変わらない。
実験失敗。
仮説は覆された。
そんな悲しい思いで見守る俺である。
円花は碧く輝く剣を構える。
剣を構えて男を睨む少女だが。
「やー、やっぱりこわいこわいですわー。
血まみれー。目がウツロなのもやー」
後ろを向いて俺の後ろに隠れる。
やっぱりそうか。
「よし。
二階に逃げよう」
俺と円花は階段を上がって逃げ出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます