第3話

「何だ、キミたちは!

 一体何をしているんだ?」


ハッと驚き俺を見つめる少女。

魔犬どもも俺の方を向く。


「何ダト、ココニ入ッテクルトハ。

 結界ヲ張ッテイタハズナノニ」


そうだったのか。

しまった。

気付かなかった。

そういえば何か弱い力の抵抗を感じた気もする。

しかしカバンを取りに行かなきゃいけない。

俺は気にもせず通り過ぎたのだ。


グルグルルルゥー、グルル。

犬どもが喉の奥で唸り声を上げる。

危険な雰囲気。


「逃げて、逃げてください。

 わたしが食い止めますわ。

 貴方は逃げて」


少女が俺と魔犬の間に割り込む。

ああー、いい娘やのう。

俺は偶然の振りをして少女の肩に手を置く。


「ええっ、なんですのこれは。

 力が溢れてきますわ」


少女は自分の手を見つめる。

溢れてくる魔力。

これならば。


「クククク、大シタ供物ニハナラナソウダガ。

 供物ハ多イホドイイ。

 オマエタチ一緒ニヤッテシマエ」


三本角の言葉で魔犬は一斉に飛び掛かってくる。

凶悪な角を振りかざし。

牙を剥きだし。

唸りながら。

襲ってくる魔犬たち。


しかし。

少女は剣を正面に構え叫ぶ。


ウォーターエクスプロージョン!

聖なる水の流れよ、目の前の悪しき物を破壊せよ!


青い光が少女から放たれる。


光に触れた魔犬たちは叫びもあげず消えていく。

後に残ったのは三本角魔狼。

体中ボロボロ、ただの死骸になる寸前。


「馬鹿ナ、結果内ダ。

 ソンナ魔力ガ使エル筈ガ…」


呟きを発して魔狼は消えて行った。


少女の様子もおかしい。

フラフラッとしている。

俺は少女の腰に手を回して支える。


「大丈夫か?」


少女は幾つもケガをして血を流しているのだ。


「わたしは大丈夫ですわ。

 力を一気に放出したものですから…………

 心配しないでください」


少女は俺の手を離れようとする。

男に抱かれるのがまだ恥ずかしい年齢か。

顔が赤らんでいる。


スッ。

そんな感じで少女の衣装が替わる。

破れていた衣装と金属のアーマー。

それが消え学校の制服になっている。

どうせなら目の前でゆっくり着替えて欲しかったのだが。


だけど少女はまだ顔色が悪い。


「駄目だ。

 怪我してるじゃないか。

 俺の家は近い。

 治療するから寄っていけ」


「あの貴方は……先輩ですわよね。

 あたしは七鮎川円花、2年です」

 

「草薙真悟、3年だ」


俺は魔法少女を家に連れ込んだ。

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