第4話

俺は魔法少女を家に連れ込んだ。


「ええっ、もう遅い時間ですわ。

 先輩の御家族も心配するでしょう」

「この時間なら両親はいないから大丈夫だ」


ゴチャゴチャ言う少女の手を俺は強引に引っ張った。

戦闘服では無くなった彼女。

七鮎川円花、ななあゆかわまどか。

音は聞いてるが、字でどう書くのかこの時点で俺は知らない。

並んで歩くと背が高い。

俺は180センチ近い。

彼女は多分170近くあるだろう。

制服姿だと普通の女子高生に見える。

ただし容姿は通り過ぎる男が振り返るくらいには目立つ。

剣を構えて闘っていたのが嘘のようだ。

少女はメガネを取り出して掛ける。

道行く人が目を留める美少女だったのが地味な印象になる。


治療してやると言うのは噓では無い。

キズを良く洗って消毒。

絆創膏。

絆創膏では小さい。

包帯を撒こうとすると少女は嫌がった。

目立つのは避けたい。

家族に気付かれたくないと言う。

仕方ないので大型の絆創膏で誤魔化す。


彼女は打ち明け話を話す。

一人で戦うのが不安だったのだろう。

特にこちらが催促した訳でも無いの勝手に話しだした。


半年くらい前、神社で襲われたらしい。

神社で彼女の手にいつの間にかはめられたブレスレット。

それを狙ってくる。

似たような魔物。魔犬やら魔猿、魔鳥だったりもする。

周期的に襲ってくる。

暗くなってから、一人で居る時が多いらしい。

知人を巻き込みたくなかったそうだ。

誰にも打ち明けられなかった。


「草薙先輩に話せて良かったですわ」


そう言う彼女の目には涙が浮かんでいる。

俺は彼女をそっと抱きしめる。

彼女はあっと言ったけど抵抗はしない。

腕を離すタイミングで軽くキス。

少女が夢見るような甘く優しいヤツ。


「あのあのあの、わたしは帰らないと。

 遅い時間になってしまいましたわ。

 家の人間が心配します」


俺は彼女を家まで送って行った。

隣駅の高層マンション。

自動車でマンションの横まで着ける。

俺は高3、既に18歳になってる。


「先輩、高校生なのに運転出来るのですか?」

「免許は持っているんだ。

 車は親のだけどね」


「本当に送ってもらわなくても…」

「駄目だよ。

 暗くなってヒトリの時襲われる事が多いんだろう。

 これからはそんな時俺が付いてるよ」


彼女は次の日また俺の家に来た。

また打ち明け話を聞いてから俺は彼女を抱きしめキスをした。

今回はキスでは終わらない。

そのままベッドに押し倒した。


それが2,3ヶ月前の話。

学年が一つ下なので俺は知らなかったが円花は校内の有名人だった。

学業優秀、容姿端麗。

おまけに実家もかなりの資産家、知る人ぞ知る名家らしい。

校内では俺に対して彼女は冷たい。

話しかけてもメガネの奥から冷たい目で見るだけ。


「どちら様ですか。

 3年の草薙先輩?

 で、わたしになにか御用でしょうか。

 無いようでしたら、わたしは忙しいので」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る